写真●テネシー大学のジャック・ドンガラ氏
写真●テネシー大学のジャック・ドンガラ氏
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 スパコンの世界ランキング「TOP500」を創始したテネシー大学のジャック・ドンガラ氏らは、TOP500のLINPACKベンチマークとは異なる新たな指標「HPCG」を2013年に提案し、2014年6月26日に現時点でのランキングを発表した(関連記事)。

 1993年に集計が始まったTOP500は、今やスパコンの開発・調達を含む各国の科学技術政策に大きな影響を与えている。「2位じゃダメなんでしょうか」で話題になった理化学研究所「京」の開発プロジェクトでも、順位の指標はTOP500のランキングを前提としていた。
 
 ここにきて、TOP500とは異なる新たなベンチマーク指標を提案した経緯について、ジャック・ドンガラ氏に話を聞いた(写真)。

Q.TOP500のLINPACKベンチマークとは異なる新たなベンチマークを提唱したのはなぜか。

A.まず、歴史的な蓄積という意味で、1977年以来40年近い歴史があるLINPACKベンチマーク、1993年以来20年以上続いたTOP500ランキングは引き続き重要だ。
 
 だが、TOP500の開始から20年以上が経つうちに、LINPACKベンチマークの結果と実際のアプリケーションの性能に大きな乖離が生じてしまった。
 
 LINPACKベンチマークは、巨大な密行列の連立一次方程式を解くことで、スパコンの性能を評価する。
 
 20年前であれば、コンピュータ資源の中でも演算性能、特に浮動小数点演算性能は高価かつ希少であり、パフォーマンスのボトルネックだった。このため、主にスパコンの浮動小数点演算性能を測るLINPACKベンチマークは、実際の科学技術計算アプリケーションの実行速度をよく反映していた。
 
 だが20年が経ち、コンピュータのアーキテクチャは大きく変わった。コンピュータ資源の中で「データ演算」、つまりプロセッサの浮動小数点演算性能は、有り余るほど豊富になった。