写真●ヤマハ 情報システム部長の井川 祐介氏
写真●ヤマハ 情報システム部長の井川 祐介氏
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 「社員が対応していたインフラ業務をすべてインフラパートナーへ移管した。その結果、社員がコア業務に専念可能になった」---。ヤマハ 情報システム部長の井川 祐介氏(写真)が、2014年6月26日に「Cloud Days 名古屋 2014/ビッグデータEXPO 名古屋 2014/スマートフォン&タブレット2014 in 名古屋/Security2014 in 名古屋」のKEYNOTE講演に登壇。「データセンターアウトソーシングとOFFICE365の取り組み」と題して、サーバー群のデータセンターへの移行やプライベートクラウド構築、Office365の導入などについて、詳しく紹介した。

インフラの70%をプライベートクラウドに移設

 ヤマハは、2013年3月までの1年間で、本社サーバールームのサーバー群をデータセンターに移行した。「ヤマハの浜松本社には、東海地震の災害リスクがある。このため、BCP対策として、本社のサーバールームから堅牢なデータセンターへの移転計画を立てた。さらに、インフラと運用のアウトソーシングにより、社員のコア業務へのシフトも進めたかった」(井川氏)。

 移転前は、本社のサーバールーム(18号館データセンター)に約600台(ストレージ容量は200TB)、東京地区にホームページ系の約200台のサーバー(ストレージ容量34TB)を設置していた。これらを、メインデータセンター(東京)とバックアップセンター(大阪)に引っ越した。引っ越したインフラの70%は、プライベート性の高いクラウド環境(新日鉄住金ソリューションズの「absonne」)に移設。残りの30%は、オンプレミスで作り込んだ。

 井川氏は、クラウドを活用した効果について、「インフラ調達から配備までの時間が、2カ月から2週間に短縮できた。短縮した分、要件の定義などをよりスムーズにこなせることが今後の課題」と語る。さらに、「以前は、社内ユーザー部門に、サーバー1台につき月額数十万円を課金していたが、これを約1/5に低減できた」と言う。「従来は、外部クラウドを勝手に使われないようにしていたが、抑止できない状態だった。月額費用を低減することで、軋轢なくガバナンスを効かせられるようになった」(井川氏)。

 サーバーを引っ越しするとともに、「社員が対応していたベンダー調整業務や保守運用対応、新規案件調達業務などのインフラ業務をインフラパートナーへ移管した。その結果、社員がコア業務に専念可能になった」と井川氏は強調する。例えば、最適なインフラの検討やインフラベンダー(ストレージベンダーやサーバーベンダーなど)の選定も、基本的には、インフラパートナーに業務移管した。

 こうしたインフラのアウトソーシングにより、「BCP対策を実現できたほか、70%をプライベートクラウド環境に収容することで機器費用が削減でき、早く安くサーバーの提供ができるようになったため、インフラ最適化も実現できた。成功したプロジェクトの一つだと思う」と、井川氏は語る。

 また、取り組みの結果、「元々、目指していた情報システム部員の姿に近づいた」という。2012年3月にはインフラ運用業務の社員が14人いたが、インフラアウトソーシングにより、2013年2月には5人に減少。運用業務が減少した分、「ユーザー部門により近い立場で要求を聞いたり全体最適の視点でユーザー部門をナビゲートする業務やアプリケーション開発業務に、情報システム部員のミッションをシフトできた」(井川氏)。