写真1●トヨタ自動車の新テレマティクスサービス「T-Connect」に対応したカー・ナビゲーション・システム
写真1●トヨタ自動車の新テレマティクスサービス「T-Connect」に対応したカー・ナビゲーション・システム
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写真2●トヨタの友山茂樹常務役員
写真2●トヨタの友山茂樹常務役員
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図1●T-Connectにおけるエージェントの概要
図1●T-Connectにおけるエージェントの概要
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 トヨタ自動車は2014年6月18日、新しいテレマティクスサービス(自動車向け情報サービス)である「T-Connect」を発表した。現行の「G-BOOK」の後継となるもので、同社が2014年夏から販売するT-Connect対応カー・ナビゲーション・システム「T-Connectナビ」(写真1)から利用できる。クラウドを使用する音声認識機能や、サードパーティのアプリケーションを端末に配信して実行する機能などを備える。

 T-ConnectナビはOSがLinuxで「Toyota Open Vehicle Architecture(TOVA)」と呼ぶアプリケーション実行環境を搭載するトヨタ独自の車載端末だ。記者会見をしたトヨタの友山茂樹常務役員(写真2)は「アプリケーション開発においては外部のIT企業と連携していくが、プラットフォーム構築はトヨタが主体性をもって取り組んでいく」と語り、「Android」など他社のアプリケーションプラットフォームをそのまま採用するわけではないというスタンスを強調した。

 T-Connectは、「iPhone」における「Siri」に相当する音声対話型エージェント機能を備える(図1)。ドライバーがエージェントに「明治通り沿いの蕎麦屋に行きたい」「営業中の駐車場を探して」といった具合に話しかけると、近くの飲食店などを検索したり、カーナビの目的地を選択したりできる。音声認識はトヨタのクラウド「トヨタスマートセンター」で実行する。音声認識技術には米ニュアンスコミュニケーションズのソフトウエアを使用している。

 T-Connectのサービスは、ネットワーク接続を前提にする。接続手段としては、ドライバーが所有するスマートフォンを使うテザリングが前提となっている。テザリングとあわせてKDDIの「au Wi-Fiスポット」も使用できる。このほか、車載通信機(DCM)を別途使用することも可能である。

インフラに「Microsoft Azure」を使用

 ドライバーの運転履歴から今後の目的地を予測する機能も搭載する。予測した目的地までのルートに交通事故や渋滞などが発生している場合は、プッシュ型でドライバーに通知する。運転履歴から目的地を予測する計算なども、トヨタスマートセンターで実行する。データを分析するためのインフラストラクチャーには、米マイクロソフトのクラウド「Microsoft Azure」を使用する。トヨタは2011年にテレマティクスに関してマイクロソフトと提携している。

 端末であるT-Connectナビに、サードパーティ製のアプリケーションを配信する「Apps」というサービスも提供する。ユーザーはAppsのストアからアプリケーションを端末にダウンロードして実行する仕組みだ。

アプリケーション実行環境は米IBM製、トヨタによるSDK公開も

 Appsのためのアプリケーション実行環境であるTOVAは、米IBMのアプリケーション実行環境「IBM Lotus Expeditor for Automotive」をベースにしたもので、自動車の位置情報のほか、アクセルやブレーキに関する情報などをアプリケーションから取得するためのアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)をトヨタが追加した。アプリケーションは「Java」で開発する。トヨタは7月に、TOVA用のソフトウエア開発キット(SDK)をサードパーティー向けに広く公開する予定だ(トヨタが開設した開発者向けのWebサイト)。

 なおT-Connectナビで使用するLinuxは、トヨタが独自にカスタマイズしたものである。トヨタはLinuxファウンデーションに参加し、車載端末用Linuxである「Tizen」の開発にも関与しているが、今回はTizenは使用していない。

 記者会見ではAppsの例として、あいおいニッセイ同和損害保険が提供する「自動車保険アプリ(仮称)」を紹介した。あいおいニッセイ同和損保は、走行距離に応じて保険料が決まる自動車保険を販売する。走行距離などの情報を、T-Connect上のアプリケーションから取得する仕組みだ。

 サードパーティー向けに公開するAPIは、端末であるT-Connectナビに関するものや、自動車の情報を取得するためのものが中心。音声認識機能などトヨタスマートセンターが備えるクラウド側の機能のAPIはまだ公開していない。将来的にはトヨタスマートセンターのAPIについても公開を検討していく。