NTT持ち株会社は2014年6月6日、同社が開発したOpenFlow対応のソフトウエアスイッチ「Lagopus」(ラゴパス)を、7月にもオープンソースソフトウエア(OSS)として公開すると発表した。併せて、すでにOSSとして提供を始めているSDNコントローラー「Ryu SDN Framework」(以下、Ryu)を活用した、OpenFlowスイッチのテストセンターを設立する。

 「Lagopus」は、NTTが2013年12月に発表したプロトタイプのソフトウエアスイッチを改良したもの(関連記事:NTT、10万フローを10Gビット/秒で処理できるOpenFlow対応ソフトスイッチを開発)。Lagopusは雷鳥を意味し、クラウド(雲)の中で活用されるソフトウエアスイッチを目指して命名された。

 制御用プロトコルとしてOpenFlowプロトコルに対応し、OpenFlowのフローエントリーを100万行程度保持している場合でも、ワイヤーレートで約10Gビット/秒の高速転送が可能な点が特徴。既存のOpenFlow対応ソフトウエアスイッチでは、フローテーブル上のフローエントリー数が数千~1万程度まで大きくなると、パフォーマンスが低下してしまう課題があった。

 NTTでは、マルチコアのCPUを活用したマルチスレッド処理に対応したり、フローテーブルの検索を効率化したり、キャッシュのヒット率を向上させたりすることで高速化を図った。

 これまで大量のフローエントリーを保持した状態で高速転送を実現するには、高価なハードウエアのOpenFlowスイッチが必要だった。それを、比較的安価なサーバー上にインストールしたソフトウエアスイッチに置き換えられるとしている。動作環境としては、インテルのデータ・プレーン・デベロップメント・キット(DPDK)を採用したサーバーが必要だ。「DPDKの技術もソフトウエアスイッチの高速化に活用している」(NTTの担当者)。

 OpwnFlowスイッチの規格としては、「OpenFlow Switch Specification 1.3.4」に盛り込まれた機能に対応する。ソフトウエアスイッチ側で転送・処理できるプロトコルは、イーサネット、ARP、IPv4、IPv6、MPLS、PBB、SCTP、TCP、UDP、VLANなど。「PBB、MPLS、Q-in-Qなどを使う、通信事業者の広域ネットワークへの導入を目指したい」(NTTの担当者)という。

 一方、RyuはOpenFlowに対応したSDNコントローラー。NTTはRyuを利用した、OpnFlow規格への準拠度を調べるOpenFlowスイッチのテストツールを開発した。このテストツールはRyuに同梱して提供しているため、他の企業も自由に利用できる。同社のテストセンターでは、代表的なOpenFlowスイッチに対してテストツールを使った試験を実施し、その結果をWebサイトにまとめて公開している。

 なお、今回発表されたソフトウエアスイッチ「Lagopus」は、NEC、NTT(持ち株会社)、NTTコミュニケーションズ、富士通、日立製作所の5社が立ち上げたSDNの研究開発プロジェクト、「O3プロジェクト」の一環として開発された。O3プロジェクトの一部は、総務省の「ネットワーク仮想化基盤技術の研究開発」と「ネットワーク仮想化統合技術の研究開発」による委託を受けて実施されている(関連記事:NEC、NTTグループ、富士通、日立など5社が広域ネットワーク向けSDNプロジェクトを開始)。

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