国立情報学研究所(NII) アーキテクチャ科学研究系の佐藤一郎教授は2014年5月30日、NIIオープンハウス2014の基調講演で「ビッグデータとパーソナルデータ」をテーマに、個人情報保護法改正に関わる論点を解説した(写真)。
佐藤氏は、政府IT総合戦略本部「パーソナルデータに関する検討会」委員、同会技術検討ワーキンググループ(技術WG)主査として、法改正の議論に深く関わっている。同氏は「政府を代表するわけではなく、個人の意見として」と断りつつ、今の政府方針の概要を説明した。
なぜ今、法改正か
ここにきて個人情報保護法改正への動きが進んでいるのは、2003年に制定された現行法が、その後の技術の進歩に追いついていないためだ(図1)。
現行法では、個人情報の要件の一つに「容易に照合でき、特定個人を識別できる」、いわゆる容易照合性がある。この照合、つまり情報を外部のデータと付け合わせる技術が向上し、さらに照合可能な外部データがインターネットの普及で大きく増えた。この結果、容易に照合できる情報の範囲が広がり、グレーゾーンが拡大してしまった(図2)。
今回の法改正の主なポイントは三つある(図3)。一つは、グレーゾーンを減らし、保護すべきパーソナルデータを明確にすること。もう一つは、個人を特定しにくくなるようデータを加工することで、本人の同意なしで第三者に提供できる新たなデータ類型を導入すること。最後の一つは、これまで各省庁が所管していた個人情報保護の機能や権限を集約・強化した第三者機関(プライバシーコミッショナー)を設置することだ。
このうち佐藤氏は、技術WGが深く関わった「グレーゾーンの低減」と「同意なし第三者提供の新類型」について説明した。