スペインの男性が米Googleに対して自身に関する情報へのリンクを検索結果から削除するよう求めていた裁判で、欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)は現地時間2014年5月13日、原告の主張を認める判決を下した。

 この問題は、原告の男性が自分の名前をGoogleで検索した際に、関連する過去の新聞記事へのリンクが検索結果で提示されることについて苦情を申し立てたことに端を発している。新聞記事は1998年にこの男性の差し押さえられた不動産が競売にかけられたことを報じたもので、男性は2010年2月に情報の削除を求めて新聞社とGoogleをスペイン情報保護局(AEPD)に提訴した。

 AEPDは2010年7月30日に、Googleのスペイン事業(Google Spain)およびGoogleに対し、Google検索のインデックスから問題のデータを除外するよう言い渡した。一方新聞社に対する原告の苦情は退けた。これを受けGoogle SpainおよびGoogleはAEPD判断の取り消しを求めて上訴していた。

 ECJは2013年6月、Web公開された個人情報を検索インデックスから除外する責任をGoogleが負う必要はないとするNiilo Jaaskinen法務官の意見書を公開したが(関連記事:Googleは検索結果の個人情報を削除する義務はない、欧州裁判所法務官の見解)、最終的にこの見解を覆した。

 Jaaskinen法務官は今回、「検索エンジンプロバイダーは、一定の条件のもと、個人情報を含むWebページへのリンクを検索結果から削除する義務がある」と結論づけた。ただし、対象となる情報によって、インターネットユーザーの関心と、プライバシーや個人データの保護といった権利との間でバランスを考える必要があることも強調した。

 今回の判決を受け、複数の海外メディア(米Wall Street Journal英Financial Timesなど)は、ECJが「忘れられる権利(right to be forgotten)」を支持したと報じている。忘れられる権利は、欧州でプライバシー保護関連の規定に盛り込む動きが高まっているが、専門家の間でも意見が分かれており、実際、昨年6月のJaaskinen法務官の意見書では「データ保護指令で全般的に制定されていないため、忘れられる権利を主張することはできない」としていた。

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