NTTは2014年5月13日、NTT東西において光回線の卸売り「サービス卸」を第3四半期半ばまでに始めると発表した。NTT東西は現状、「フレッツ光」のブランド名で光サービスを提供しているが、多種多様なプレイヤーがNTT東西から光回線を調達して独自ブランドで販売できるようになる。料金を含めた提供条件はこれから詰め、第2四半期には公表する予定である。

写真1●NTT東西による光回線の「サービス卸」の概要(NTTの発表資料から抜粋)
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 光アクセスの本格的な卸売りは世界初という(写真1)。様々なプレイヤーが光回線を借りて独自ブランドでサービスを展開できるようにすることで、「世界最高水準の光アクセスを活用した新たなビジネスモデルの創出を推進していきたい。ひいては、社会課題の解決や日本の産業競争力の強化に貢献したい」(鵜浦博夫社長)とする。

 当初はインターネット接続事業者(プロバイダー)やMVNO(仮想移動体通信事業者)による移動と固定を融合したサービス(FMC:Fixed Mobile Convergenceと呼ぶ)の展開が見込まれるが、ゆくゆくは医療機関や家電メーカーなど幅広い産業のプレイヤーが参入し、新たな価値を提案するサービスが生まれると想定する。

 鵜浦社長は就任以来、「バリューパートナーを目指す」という方針を一貫して主張してきた。NTT東西のビジネスはこれまで、コンシューマー向けのBtoCが中心だったが、今後は「黒子役」に回ってパートナー企業のサービス展開を支援するBtoBtoC「光コラボレーションモデル」を推進していく考えだ。就任当初から提供を計画しており、固定と移動の融合時代が本格的に到来してきたタイミングを見計らって投入したという。

 サービス卸の具体的な提供条件はこれから詰めるが、「コアネットワークを含め、通信設備を持たないプレイヤーでも広く参入できるようにする。(OSUと呼ぶ光信号伝送装置など)設備の共有ではなく、公平な条件で提供する」(鵜浦社長)。NTT東西の光回線を巡ってはこれまで、設備の共有による1分岐貸しなどが議論となってきたが、卸売り自体は「現行法を改正することなく提供できる」(同)。

 一方、今回の発表により、NTTドコモがNTT東西の光回線の卸提供を受けて「セット割」を展開する道筋も見えてきた。ただ、鵜浦社長は「NTTドコモ自身がNTT東西の提供条件を確認しながら最終的な答えを出すもの。(今回の発表は)様々なパートナーと新しいビジネスを開拓する方向で考えており、そのためであればやるべき。シェアを奪い合ったり、NTTグループだけを優遇したりするものではない」と強調した。