日本の会計基準設定主体であるASBJ(企業会計基準委員会)は2014年5月12日、日本版IFRS(国際会計基準)、J-IFRSなどと呼ばれる「エンドースメントされたIFRS」の策定に向けて議論する「IFRSのエンドースメントに関する作業部会」の第12回会議を開催した。これまでの議論を整理した上で、基準の削除/修正は「必要最低限」とするなど、エンドースメントされたIFRSの公開草案策定に向けた方針を打ち出した。

削除/修正のハードルは高くすべき

 エンドースメントされたIFRSは、IFRSそのもの(ピュアIFRS)を構成する基準一つひとつを検討し、必要に応じて削除または修正したものを指す。金融庁が2013年6月19日に公表した報告書「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」でIFRS任意適用促進策の一つとして示した(関連記事:「強制適用の判断見送り、我が国に適したIFRS策定」、金融庁が報告書)。今回の会議で、ASBJはエンドースメントされたIFRSを「修正版IFRS」と呼んでいたが、この呼び方が正式になるかどうかは未知数である。

 今回、IFRSに対する削除/修正について、以下の方針を示した。

(ピュアIFRSを)可能な限り受け入れるのが前提。十分な検討を尽くした上で、基本的な考え方や実務上の困難さの観点から「なお受け入れがたい」との結論に達したもののみを削除/修正することが適切である。

 削除/修正する基準をなぜ必要最低限にするべきかについて、(1)IFRSをカーブアウト(基準の一部を削除/変更して適用)して適用している各国・地域の事例を見ると、削除/変更はいずれも必要最低限、(2)ピュアIFRS適用企業との比較可能性を考慮する必要がある、(3)削除/修正する項目を少数に絞ったほうが(IFRS策定主体のIASB[国際会計基準審議会]などに対する)意見発信力が強くなると考えられる、の3点を挙げた。

 ASBJはこの点について、以下のように補足した。「IFRSは決して『(日本の)外の団体』が作っているものではない。ASAF(会計基準諮問フォーラム)などを通じて、我々もIFRSの策定に貢献すべき立場にある。加えて、IFRSはIASBによるデュープロセス(適正な手続き)を経て作成されている。そうしたものを削除/修正する重みを意識して、ハードルを高くすべきと考えた」。