写真●KDDIの田中孝司社長
写真●KDDIの田中孝司社長
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 「今、VoLTE(Voice over LTE)のトライアルを進めているところ。LTEのエリアが(実人口カバー率で99%まで)できてきたので、着実にスタートしたい。VoLTEから(3Gへ)切り替わらないようにしたいという思いが強く、実は3Gへフォールバックが無いVoLTEの仕組みを導入する」--。KDDIの田中孝司社長(写真)は、2014年4月30日に開催された同社の決算会見の席でこのように発言した。

 VoLTEとは、LTEのネットワーク上でVoIPによる電話サービスを実現する仕様。携帯電話事業者の業界団体である「GSMA」が、3GPP Release 8~10に含まれる音声サービス提供用の仕様から必須となる機能を抽出し、「VoLTE Profile」(IR.92)として仕様をまとめた。NTTドコモは今夏にVoLTEの商用サービスを開始することを明らかにしている。2014年度は、LTE-Advancedのキャリアアグリゲーション(CA)とともに(関連記事1:KDDIが今夏キャリアアグリゲーション導入、年度末に対応局を2万局に)、(関連記事2:ドコモも14年度内にLTE-Advanced、最大225Mビット/秒のキャリアアグリゲーション)、VoLTEについても日本における導入元年になろうとしている。

 そんなVoLTEだが、実は導入に向けては一般的に主に2つのシナリオが考えられている。LTEエリアから3Gエリアに切り替わった場合、VoLTEから回線交換へと呼を引き継いで音声サービスを継続できる(1)SRVCC(Single Radio Voice Call Continuity)ありのケース、LTEエリアから3Gエリアに切り替わった場合、音声サービスを継続しない(2)SRVCCなしのケースだ。

 NTTドコモなど多くの携帯電話事業者は、まだLTEのエリアが隅々まで行きわたっていないため(1)のSRVCCありのケースでVoLTEの導入を進めると見られる。これに対してKDDIは、冒頭の田中社長の発言から(2)のSRVCCなしというケースを選択したことになる。

 実は韓国のLG U+やSKテレコムといった携帯電話事業者が、2012年夏に(2)のSRVCC無しの仕組みでVoLTEの商用サービスを開始している。SRVCCありのケースと比べて、シンプルな構成で導入できる利点がある。KDDIのように、既にLTEのエリアが実人口カバー率で99%まで達していれば、3Gへと音声サービスを継続できる仕組みは「意味が無い」(KDDIの田中社長)のだろう。また韓国の携帯電話事業者やKDDIは3Gの仕様として、今となっては世界的にマイナーになってしまったCDMA2000方式を採用している。そのため、できるだけ早くCDMA2000方式のインフラ設備を償却したい思いもあるのかもしれない。

ドコモの新料金プランへの「即応はやめた」

 そんなKDDIによるVoLTEの導入時期だが、「夏にいろんなことをやり過ぎる(キャリアアグリゲーションやau WALLETなど)ので」と田中社長が話すこともあり、少なくとも今夏のドコモの導入時期よりも先行することは無さそうだ。

 田中社長は「VoLTE導入のタイミングで料金を徹底的にやろうと思っている。実はNTTドコモのカケホーダイ(関連記事:ドコモが新料金プラン発表、家族の囲い込み強化し長期契約者にも配慮)に対するユーザーの反応がよく見えていない。それで(ドコモの新料金プランに対する)即応をやめた。我々がよいと思うタイミングで今年度の価値訴求をしていきたい」と打ち明ける。

 実はVoLTEだから音声サービスを低料金にできるという相関関係はあまり無い。機能面では、これまでの回線交換と比べた音質の向上や、ビデオコールやデータとの連携といった機能が新たに加わる。田中社長は「VoLTEの本命はデータとの連携ではないか」とし、安易な料金競争を回避したい思いものぞかせた。