AMDは2014年4月29日、グラフィックス機能や各種インタフェースを統合したSoC(システム・オン・チップ)の新製品として、A10 Micro-6700Tなど7モデルを発表した。開発コード名「Mullins」「Beema」と呼ばれていた製品で、CPUコアを改良したほか、英アーム(ARM)のCortex-A5を利用した「PSP(プラットフォーム・セキュリティ・プロセッサ)」をx86コアと同じダイ(半導体本体)に統合した。
AMDの省電力SoCは、初代の「Brazos」(開発コード名)から、x86コアのSoCとして初めて4コアを実装して2013年に登場した「Temash」「Kabini」(同)に続き、今回のMullins、Beemaが3世代目。CPUコアの改良や電力制御の最適化により、前世代のSoCのおよそ半分のTDP(サーマル・デザイン・パワー、熱設計電力)で1.5倍以上の動作周波数にした。電力当たりの演算性能は競合製品の最大2倍になったという。
CPUコアは従来モデルの「Jaguar」(開発コード名)から、新SoCでは「Puma+」(同)にした。最適化により、リーク(漏れ)電流を19%減らせたという。グラフィックス機能はAMDの最新アーキテクチャーである「GCN(グラフィックス・コア・ネクスト)」。こちらも前世代よりリーク電流が38%減少した。動画再生支援の「UVD」や、ハードウエア動画エンコード機能「VCE」も搭載する。PCI ExpressやSerial ATA、USBのコントローラーを統合しているのは従来通りだ(図1、図2)。
目玉機能の一つであるPSPは、暗号化の高速処理のほか、ARMプロセッサーが備える「TrustZone」機能を利用してセキュリティを高める。TrustZoneでは、x86コアが管理するメモリー空間とは別の空間を作り出して、不正なプログラムからの干渉を受けずにデータを処理できる。PSPは、セキュリティチップを活用するための各種仕様を策定している非営利団体であるグローバルプラットフォームが定めた「TEE(トラステッド・エグゼキューション・エンバイロメント)」のAPIを通じて利用できる(図3、図4)。オンラインバンキングやショッピング、マルウエアからのデータ保護、生体認証などでのセキュリティ強化に有用だという。