教育でのICT活用を現場でサポートする専門人材「ICT支援員」。先行して配置した自治体や学校の多くは、その効果を高く評価している。文部科学省も必要性を認識しているものの、スキルが現場とマッチしないなどの理由からICT支援員の配置は局地的な動きにとどまっている。そうした中、九州工業大学は高等学校の教科「情報」を担当する情報科の教員養成ノウハウをもとに、ICT支援員向けに体系立てた教育を行い、必要なスキルを持つICT支援員の育成に取り組んでいる。

文科省がICT支援員配置の必要性を言及

 ICT支援員は、授業や校務でICT機器を使う教員をサポートするスタッフで、授業に備えた機器のセッティングや教材の作成支援、トラブル対応などを担当する。授業の内容によっては教員とともに教室に入り、教員や生徒の補助にあたる。文部科学省は2009年3月に公開した「教育の情報化に関する手引き」の中で、ICT支援員の必要性に言及。ICTに精通した専門の人材を学校に置くことで、授業でICTを効果的に活用でき、児童や生徒の学習効果を高めることができるとしたことで、その存在が広く知られるようになった。

 2010年度から総務省が実施した実証研究「フューチャースクール推進事業」では、実証校にICT支援員が常駐し、授業でのICT活用を支援した。また総務省の「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」でもICT支援員の配置に交付金が出されたほか、自治体が独自にICT支援員を置いたところも多い。しかし全国レベルで本格化する動きにまでは至っておらず、置いた自治体の中にも自治体内の事業仕分けなどの影響で配置をとりやめたところがある。

 これらの理由の一つとして挙げられるのが、ICT支援員に求められるスキルが曖昧な点だ。そのため個々の支援員でICTのスキルレベルに大きく幅があり、現場が期待する業務を十分こなせないケースがある。またICTのスキルは十分でも、教育現場という民間とは違う特殊な環境になじめず、スキルを発揮できないまま辞めてしまう例も少なくない。