実証研究の概要を説明する、目黒区立第一中学校の伊藤惠造校長
実証研究の概要を説明する、目黒区立第一中学校の伊藤惠造校長
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報道関係者向けの模擬授業の様子。1人1台ずつ配布されたタブレットに、学校の敷地で見つけた植物の名前を書き込む
報道関係者向けの模擬授業の様子。1人1台ずつ配布されたタブレットに、学校の敷地で見つけた植物の名前を書き込む
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全員の画面を電子黒板に表示。生徒がどんな植物を見つけたかが一覧できる
全員の画面を電子黒板に表示。生徒がどんな植物を見つけたかが一覧できる
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白地図を使って、植物を見つけた場所に印を付ける。全員が付けた印が、1枚の白地図上に集まる。植物の種類ごとに色が決められており、この結果から「タンポポは日当たりが良い場所に生える」「日当たりが悪い場所にはドクダミが多い」などといった植物ごとの特性が分かる
白地図を使って、植物を見つけた場所に印を付ける。全員が付けた印が、1枚の白地図上に集まる。植物の種類ごとに色が決められており、この結果から「タンポポは日当たりが良い場所に生える」「日当たりが悪い場所にはドクダミが多い」などといった植物ごとの特性が分かる
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生徒の観察結果を基に、PowerPointを使って植物の特性をまとめる
生徒の観察結果を基に、PowerPointを使って植物の特性をまとめる
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授業中、タブレットを使用しないシーンでは、生徒の画面にはこのようなメッセージが表示される
授業中、タブレットを使用しないシーンでは、生徒の画面にはこのようなメッセージが表示される
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実証研究でのシステム構成図(発表資料より抜粋)
実証研究でのシステム構成図(発表資料より抜粋)
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 東京都目黒区教育委員会は2014年4月21日、同区立第一中学校において、ICT(情報通信技術)を活用した授業の実証研究を開始すると発表した。70台のWindows搭載タブレットや2台の電子黒板、光ファイバー回線などを導入し、授業に生かす。機器やソフトウエア、ネットワーク環境は、日本マイクロソフト、NEC、NTT東日本が提供する。実証研究の期間は、2015年3月末までの予定。

 目黒区立第一中学校の生徒数は、全校で154名。これらの生徒が、70台のタブレットを共用する。「全員が1人1台使ったり、1クラスで5台使ったりなど、授業によってさまざまな活用の仕方があり得る」(伊藤惠造校長)。全教科の授業で活用するほか、部活動などでの利用も想定する。将来は、家庭への持ち帰り学習の試行も検討したいという。

 「今は先の見えない時代といわれる。グローバル化する社会を生き抜く子供たちに、自分自身の力や、他人と共に協働することで課題を解決する力を身に付けさせたい」。伊藤校長は、実証研究の狙いをこう語る。同校は2014年1月から段階的にタブレットなどの活用を始めており、教員と生徒のコミュニケーションだけでなく、生徒同士のコミュニケーションが増加するといった効果を確認しているという。今後、本格的に授業で活用しながら、ICT活用の価値を見出していきたいとした。

 同校では同日、報道関係者を生徒役にした模擬授業も実施。春の植物を学ぶという理科の単元をテーマに、タブレットを用いた授業を実施した。参加者には1人1台のタブレットが配布され、ペンを使って自分が観察して見つけた植物名を書き込む。教員は全員の画面を前方の電子黒板に映し出し、「どんな植物が多く見つかっているか」などと参加者に問いかけながら授業を進めた。

 学校の白地図を全員のタブレットに表示し、自分が植物を見つけた場所に印を付けるように指示する場面もあった。教室前方の電子黒板だけでなく、手元のタブレットにもほかの人が付けた印が表示される。全員が付けた印が一つの地図上に集まると、どんな場所にどんな植物が生えているかが一目瞭然になる。こうした模擬授業を通じて、全員の学習成果を共有することの意義を示した。

 同校は元々、教科ごとに設けられた専用の教室に、壁掛け型のプロジェクターや書画カメラ、ノートパソコンを常設していた。これらを教員が日常的に利用しているという実績があり、今回の実証研究に踏み切ったという。数十台ものタブレットや電子黒板の導入は初めてで、富山大学 人間発達科学部の山西潤一教授などの専門家を監修者に迎え、教育効果を高めるICT活用法の開発を目指すという。

 目黒区では2012年度から5年計画で、学校のICT環境の整備を進めている。ただ「現状では無線LANに対応できるネットワーク設計にはなっていない。今回の研究を踏まえながら区としても検証を進めて、2017年度からの整備方針に反映させたい」(目黒区教育委員会 教育指導課長の佐伯英徳氏)という。ただ今回の実証研究のようなタブレット導入については「現段階では研究の域を脱していない」(佐伯氏)とした。

 実証研究に協力する3企業は、それぞれ役割分担をして実証研究を支援する。日本マイクロソフトは、Windows 8.1やOffice 2013などの活用に関する教員向け研修を実施。NECはNECフィールディングを通じたICT機器の保守や、ヘルプデスクの開設などを行う。NTT東日本は、教員の授業案や計画作りの支援、ICT支援員の派遣などを実施するという。