写真1●開会挨拶する山本一太IT政策担当大臣
写真1●開会挨拶する山本一太IT政策担当大臣
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 政府のIT総合戦略本部は2014年3月27日、「パーソナルデータに関する検討会」(座長・宇賀克也東京大学大学院教授)の第6回会合を開き、マイナンバー制度の特定個人情報保護委員会の機能・権限を拡張し、消費者庁などが持つ個人情報保護法の機能・権限を移管する事務局案を提示した。また、現行法の主務大臣制と第三者機関の関係について五つの案を提示した。

 主務大臣制と第三者機関の関係では、一つは主務大臣制を廃止してすべての権限などを第三者機関に集約する案、二つめはセンシティブデータなど高度に専門的な知見が必要とされる「特定分野」について主務大臣制を残し、他分野は第三者機関に権限を集約する案とした。

 さらに、主務大臣制と第三者機関を並存させ特定分野を担当する主務大臣の一定の権限を上乗せする案や、主務大臣制と第三者機関が同等の権限を持つ案、最後に第三者機関が主務大臣などの執行を監督する機関とする案が示された。

 検討会では、一つめの主務大臣制を廃止してすべての権限などを第三者機関に集約する案が望ましいとして、主務大臣制と第三者機関を並存する案に反対する意見が相次いだ。事業者側からは「窓口が二つだとやりづらい」と重複行政の排除を求める主張が出た。消費者側も一つめの案が理想的とし、第三者機関が「いつまでに組織を拡大できるか約束できる形にしなければ賛成できない」という意見もあった。

 メンバーからは、データ活用で「新しい産業を興すにはどの省庁に相談すべきか現状は極めて不明瞭で、データ活用を阻害したりプライバシー侵害を起こしかねない。特定分野こそ第三者機関に移行すべきだ」という意見の一方、「通信の秘密は総務省の問題。解釈基準は第三者機関に合わせ、トータルとしては業法が前に出ないと泣き別れになる」という主張があった。改正を繰り返す形で一つめの案を目指すよう求める声のほか、立ち入り検査権限などに加えて公表による制裁の根拠規定や、事前相談制度が必要という指摘もあった。

 オブザーバーの堀部政男・特定個人情報保護委員会委員長は、主務大臣制が作られた経緯を紹介。主務大臣制度の長所を活かしながら、第三者機関が役割を果たす必要があると述べた。

 さらに事務局案は、個人情報保護やプライバシー保護の紛争・苦情処理について、第三者機関から独立した体制を整備し、公害等調整委員会と同様の仕組みや、紛争処理機関を指定する案を提示。また、第三者機関の委員増員で「パーソナルデータの利活用とプライバシー保護に配慮したバランスの取れた人選とする」ことなどが示された。

 検討会は、4月の第7回と第8回会合でパーソナルデータの範囲の定義や、個人の権利利益と個人情報取り扱い事業者の義務を議論する予定。5月中旬の第9回会合で、医療情報などの取り扱い、事業者が自主的に行うパーソナルデータの保護の取り組みを評価する民間主導の枠組みとして「認定個人情報保護団体」を議論。罰則なども検討する。5月下旬の第10回会合で、法改正大綱の検討会案を議論するという。