写真1●日本行動計量学会と産業技術総合研究所が開催したシンポジウムの会場。100人の聴衆が集まった
写真1●日本行動計量学会と産業技術総合研究所が開催したシンポジウムの会場。100人の聴衆が集まった
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 日本行動計量学会と産業技術総合研究所(産総研)は2014年3月21日、東京都内で、ビッグデータからの価値創出をテーマにしたシンポジウムを開催した。小売業の購買分析などに携わる日本の第一級の統計学者が講演するとあって、約100人が会場に詰めかけた(写真1)。

 登壇した統計学者の1人が、小売業の購買分析について発表した東北大学大学院経済学研究科の石垣司准教授だ。総合研究大学院大学で統計科学を専攻し博士号を取得。統計学の応用を目指して経済学分野で研究を進めている。

 石垣准教授は購買履歴のデータを分析することで、顧客セグメントを割り出したり、来店人数の予測を精度良く行ったりした、小売業と協力しての研究成果を発表。「購買履歴のデータを使えば、顧客の購買状況をモデル化したり顧客セグメントを見つけ出したりすることができる」と説明した。

 「大量データがあるので何か新しいことをしてみたい」と、企業から相談を受け付けることが多いという石垣准教授。「企業が大量データの分析を通してやりたいことというのが、現状把握にとどまっているようだ。把握した上でどうアクションを起こしたいのかを明確にするのが重要だ」と指摘した。

 さらに石垣准教授は、企業が行えるビッグデータ活用には2種類あると説明した。1つは「受動的ビッグデータ」の活用だ。POS(販売時点情報管理)データなど、すでに蓄積できているデータから新たな知見を得ることを指す。しかし石垣准教授はそれだけでは不十分と指摘。ビジネス上の価値を高めるには、自ら知りたい情報を集める「能動的ビッグデータ」の活用も大切と強調した。

 能動的ビッグデータ活用の1手法が、ネット企業で顧客の利用度合いや売り上げを高めるのに使われているA/Bテストだ。Webページのレイアウトなど、違いがある複数パターンを準備し、それらをネット利用者にいずれかを出し分ける。それぞれのパターンでその後、利用者がどう行動したのかをデータを基に分析。その結果を踏まえて、より多く利用されたパターンを採用し、ネットサービスの利用率や売上高を高めていく。