総務省は2014年3月18日、携帯電話の電波が届いていない過疎地での基地局整備を議論する「携帯電話の基地局整備の在り方に関する研究会」の最終会合を開いた。前回までの議論で報告書案を作成しており、今回の会合では「携帯電話を使いたいのにエリア外にいる国内人口約3万4000人を、今後3年で半減させる」などとした報告書案の内容をほぼ承認した。近く最終報告書にして公表する予定だ。

 過疎地や離島など携帯電話の電波が届いていない地域では、これまでも公費を使って基地局整備を進めてきた。国や地方自治体が建設費用の一定割合(例えば2分の1~3分の2)を負担して、携帯電話事業者が基地局を設置していく方式である。これにより過疎地でも携帯電話の利用可能地域がかなり広がったが、最近は公的支援を活用した基地局設置のペースが鈍っているという。残された電波の不感地帯をどう解消するかがこの研究会のテーマだ。

 今回の報告書では、金銭面の公的支援策は従来のまま、コストを下げる基地局技術の採用や携帯電話事業者の努力を促すことで、エリア外人口を減らす方向性を打ち出した。例えば、小規模集落をカバーするのに適する小型基地局の設置費用は2003年の6000万円から現在は3000万~4000万円に下がり、対象地域が狭いものは1000万~2000万円で設置できるという。現在は屋内向けが主なフェムトセル技術の活用も提言した。

 最新のエリア外人口も調査した。2012年度末で6万人だったエリア外地域の居住状況を自治体に照会して精査したところ、現在はエリア外に3240集落があり3.9万人が居住していることが分かった。このうち電波の不感を解消して欲しいという要望があった3.4万人が居住する集落が、整備の対象地域になるという。報告書案はこの3.4万人を2014年度からの3年で半減させることを目指すとした。

 基地局整備を支援するため、総務省がエリア外地域の居住状況などをまとめたデータベースを作成し、事業者に公開する方針も打ち出した。エリア外の集落ごとに、世帯数や年齢別人口、将来の集落の状況(10年後の見込み世帯数など)、自治体保有の光ファイバー網の状況、近隣の携帯電話基地局の状況などの項目を調査し、データベースに登録する。

 なおエリア外にある3240集落のうち6割超が居住者10人未満の集落といい、依然として集落ごとに基地局を設置する経済的負担は大きいといえる。研究会の議論では、経済的に不感地帯の解消が困難になってきたとする携帯電話事業者の説明と、さらなる不感地帯の解消へ国の支援強化を要望した自治体関係者の意見が対照的だった。

 その中で、委員の一人として参加したコミュニティデザイナーの山崎亮氏が「地域ごとに支援が本当に必要かどうかをよく見極めるべき」と一貫して主張した点が注目を集めた。山崎氏は、過疎に悩む町村の中には山間部の人口を町村の中心部に集めて地域の維持を図る「コンパクトシティ」などの動きがある点を指摘。「支援が先にありき」になると、地域が考えている将来構想と整合性がない支援策が一人歩きする危険性を訴えた。そのためにも、市町村の部局と関係省庁が横断的に地域の維持・再生計画を共有することで、本当に必要としている地域に支援が届くよう提言した。