写真●動画をこま落ちさせないようネットワーク構成が自動的に切り替わるデモ
写真●動画をこま落ちさせないようネットワーク構成が自動的に切り替わるデモ
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 日本の通信産業が集結してネットワーク仮想化技術「SDN(Software Defined Networking)」の研究開発を進める国家プロジェクト「O3(Open Organic Optima)」が2014年3月14日、研究成果を披露するシンポジウムを東京都千代田区の秋葉原で開催した。

 O3は総務省が予算を拠出する委託研究「ネットワーク仮想化技術の研究開発」の受託先で、NTT持ち株会社とNTTコミュニケーションズ、通信機器を手掛ける国内電機大手のNEC、富士通、日立製作所の5社が参加する。2013年度から3カ年のプロジェクトで、2014年度は約7億円が国から拠出される予定だ。プロジェクト中核メンバーであるNEC情報・ナレッジ研究所の岩田淳所長代理は「今回の出展までで個々の要素技術はかなりそろった。今後は要素を連携させる統合的な技術の開発に焦点が移るだろう」と進ちょくを説明した。

 出展では、5社それぞれか複数社で共同開発した様々な技術のデモが行われた。例えば、日立製作所と富士通は両社の技術を組み合わせ、ユーザーの要求で動的にネットワーク構成を変えるデモを実演した(写真)。日立の「マルチレイヤー管理制御機能」と富士通の「光カットスルー技術」を組み合わせている。

 デモでは、遠方の地点Aからの監視ビデオの映像が中間地点Bを経由して、ユーザーがいるC地点に伝送されており、初期状態ではこま落ちが発生している。中間地点Bのネットワーク機器で発生するルーティングなど処理遅延が原因だ。これを、地点Cにいるユーザーがこま落ちのないよう伝送するように品質の指示を出すと、中間地点Bの通信機器が光信号を単にリピートしてルーティング処理をしないよう動作を変える。論理的なネットワーク構成が「地点A-地点B-地点C」からBを中抜きした「地点A-C」に自動的に切り替わったことになる。

 ここでマルチレイヤー管理制御は、アプリケーション側からネットワーク資源の要求を受けると、下位レイヤーの資源プールから要求を満たす資源を検索して、上位レイヤーのトラフィックに割り当てる動作をしている。光カットスルー技術は、ルーティングが不要なケースなどで、光ダイレクトパスを通信経路の端から端まで設定して低遅延の通信を実現している。