写真1●セーフガブのジェフ・グールド代表
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写真2●セーフガブが日本の小中高校生の保護者500人に対して行った調査の結果。ネットサービスを提供する企業が、学校における子供のネット履歴などを追跡・分析することについてどう考えるかを尋ねた
写真2●セーフガブが日本の小中高校生の保護者500人に対して行った調査の結果。ネットサービスを提供する企業が、学校における子供のネット履歴などを追跡・分析することについてどう考えるかを尋ねた
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 「日本では、今後5年間で全ての子供たちにパソコンやタブレットを整備しようとしている。そこではクラウドサービスが使われ、プライバシーやセキュリティの問題が起こるだろう」。こう話すのは、米セーフガブ(SafeGov.org)のジェフ・グールド代表(写真1)。セーフガブは、クラウドコンピューティングにおけるプライバシーやセキュリティの問題の解決を推進する非営利団体だ。2014年3月13日に都内で説明会を開催し、日本の教育分野でのIT利用におけるプライバシー保護の重要性を訴えた。

 グールド氏は、米グーグルや米フェイスブックをはじめとするクラウドサービスの提供者は「個人情報を“原材料”としてビジネスを構築している」と話す。例えばグーグルの場合は、Gmailでやり取りしたメールの内容や、閲覧したWebページ、YouTubeで再生した動画の種類などのデータを蓄積している。フェイスブックの場合も、年齢は75%、喫煙者か否かは73%、政治的思想が保守派かリベラル派かは85%などの確率で、その人の属性を把握しているとする研究結果があるという。

 こうしたデータを解析することで、その人の趣味・嗜好をかなり正しく把握できる。その結果、その人が興味を持ちそうな広告を効率的に表示できる。

 同時に、こうしたデータは便利なサービスの実現にもつながる。例えばグーグルは、Gmailのメールを基に、これから搭乗予定の飛行機の情報や、宿泊先のホテルの情報を提示する。「私自身、グーグルを今後も使い続けるだろう。なぜなら、便利だからだ」(グールド氏)。ユーザー自身が、自分に関する情報が蓄積・解析されていることを理解していれば、こうしたビジネスモデルにも有効性があると話す。

 ただし、学校については話が別だという。米国では既に数百万人の児童・生徒が学校でGmailやGoogle Appsを使っている。グーグルは、学校向けのサービスでは広告を表示しないと明言しているが、「データ分析をしないとは言っていない」(グールド氏)。例えば、Gmailでやり取りしたメール内容などは分析している。さらにその結果に基づき、Gmail以外のサービスの利用時にはその子供に向けた広告を配信する。

 こうした実態を憂慮する保護者は少なくない。実際、カリフォルニア州では訴訟も起こされているという。セーフガブが日本の小中高校生の保護者500人に対して行った調査でも、企業が自分の子供のネット利用状況を分析することに対して「心配だ」と答えた保護者が74%に上った(写真2)。

 「データ分析はパワフルで、社会に多くの利点をもたらす。ただし、例えば処方箋薬や原子力などその他のパワフルなテクノロジーと同様、その利用には規制がかけられるべきだ。特に、強い制限を掛けるべき領域が学校だ」とグールド氏は話す。米国では、データ分析に関する理解が広まる前に学校にITが導入され、手遅れになってしまった。ただ、これから教育現場にITを本格展開する日本なら、まだ間に合う。グールド氏は「政府や学校がこの件をよく理解し、米国で犯したミスを回避してほしい」と訴えた。