日立健康保険組合(日立健保)と日立製作所は2014年3月12日、特定健康診査(特定健診)や診療報酬明細書(レセプト)の情報を活用し、集団における将来の生活習慣病の発症率と医療費総額を予測するモデルを開発したことを発表した。開発にあたっては、日立健保が保有する特定健診とレセプトのデータを匿名化し、個人を特定できない形にして利用した。

 これまで生活習慣病の発症を予測するには、一般的に疫学研究や医療現場で得られた知見をもとに、疾病ごとの個別モデルを生成する方法が用いられてきた。しかし生活習慣病は、各疾病が互いに影響しあい、重症化すると合併症を引き起こすことから、精度の高い予測をするには疾病間の影響まで考慮した発症率予測とこれに基づいた医療費予測が必要になるという。

 そこで日立健保と日立は、日立健保が保有する複数年分のレセプトと特定健診のデータから、生活習慣病の疾病間の影響を考慮した予測モデルを開発した。具体的には、BMI(Body Mass Index)や血糖値など生活習慣病に関わる検査値や問診結果、傷病名と診療内容、診療報酬点などの項目について、データの経年変化を分析。ある状態から将来どのような状態に変化するかを確率的に求めると同時に、コンピュータがデータに潜むパターンや規則性などを自動で導き出す機械学習により、BMIと糖尿病など異なる項目間の影響度合いを見る、といった具合だ。

 構築したモデルの有効性を確認するため、日立健保が保有する2010年と2011年の約11万人分のレセプトと特定健診データを用いて検証したところ、平均誤差5%で生活習慣病の医療費総額を予測できる見通しが立った。なお、一般的な手法である疾病ごとの個別モデルを使って予測した場合、誤差は約10%だという。

 実験では、11万人のデータを約9万人分のAグループと約2万人分のBグループに分け、Aグループの2年分のデータを用いて生活習慣病の医療費総額を予測するモデルを構築。このモデルを使ってBグループの2010年のデータから2011年の医療費総額を予測し、2011年の実データと比較した結果、予測値と実データの誤差は平均5%以内となった。

 日立健保では、2014年度から同モデルを試験的に導入し、将来の医療費予測を基に費用対効果の高い保健指導を導入するなどの施策を検討するという。