ガートナー ジャパンが都内で開催したイベント「エンタプライズ・アプリケーション & アーキテクチャ サミット 2014」で2014年3月11日、米ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリストのジーン・ファイファー氏(写真)は、「ビジネス、テクノロジ、人の基盤を揺るがすクラウド・コンピューティングの将来シナリオ」と題した基調講演に登壇。今後5年間で、企業のクラウドプロジェクトがどのような姿になるかという将来像を示した。

写真●米ガートナーのリサーチ部門 バイス プレジデント 兼 最上級アナリスト のジーン・ファイファー氏
写真●米ガートナーのリサーチ部門 バイス プレジデント 兼 最上級アナリスト のジーン・ファイファー氏
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 ファイファー氏はまず、クラウドのメリットとリスクをおさらいした。同氏によると、クラウドの一番のメリットは「俊敏性」にあるという。「コスト削減効果もある。しかしもはやクラウドは、コスト削減のためだけに採用すべきではない。すぐにサービスを使えるようになる、すぐにアプリケーションを使えるようになるという俊敏性を第一に考えるべきだ」(ファイファー氏)。

 一方、注意すべき“隠れたリスク”としては「統合」を指摘した。「パブリッククラウドに契約するとなると、必ず何らかの統合をしなければならない。例えば、ID管理システムとの統合やCRM(顧客関係管理)などバックオフィスとの統合。バックオフィスまで統合するとなると、非常に複雑でコストもかかる」(ファイファー氏)。その点はぜひ注意してほしいと、ファイファー氏は強調した。

「このままではIT部門は無視され、迂回されかねない」

 次にファイファー氏は、企業のIT部門は「ブローカー」になるべきと提言した。ここで言うブローカーとは、従来のIT環境の保守やプライベートクラウドの構築・管理を行うだけでなく、企業のビジネス部門との窓口やクラウドベンダーとの関係強化を担う役割を持つということだ。