ガートナーリサーチの本好宏次リサーチディレクター
ガートナーリサーチの本好宏次リサーチディレクター
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 IT技術者は東京スカイツリーに学べ――。

 ガートナーリサーチの本好宏次リサーチディレクターは2014年3月10日、都内で開催された「ガートナー エンタープライズ・アプリケーション&アーキテクチャ サミット2014」でこう強調した(写真)。

 本好氏は「俊敏な経営を支える『骨太』のアプリケーション戦略を策定せよ」と題して講演した。アプリケーションの安定的な運用と迅速な変革を両立させるために、ITリーダーが何をすべきか解説。中心部に備えた「心柱」を活用して制震性能を高めている東京スカイツリーを例に、「がっしりした土台の上に、環境変化にしなやかに対応できる仕組みを作るべきだ」と指摘した。

 本好氏は冒頭で、ビジネス・アプリケーションが「グローバル化」と「コンシューマー化」の二つの変革圧力にさらされていると定義した。エンタープライズITの利用者に、デジタルネイティブ世代が増えてきたと解説。「個人で使っているスマートフォンを業務でも使いたいという要望が増え、IT部門が管理しきれない『野良アプリ』がクラウドから勝手に導入される例もある」と本好氏は述べた。

 続いて本好氏は、安定運用を維持しつつ迅速な革新を企業にもたらすためのアプリケーション戦略を解説した。楠木建・一橋大学大学院教授の著作「ストーリーとしての競争戦略」を基に「違いをつくって、つなげる」ことがビジネス戦略の本質だと述べ、アプリケーション戦略でも同様だと主張した。

 ERP(統合基幹業務システム)について「(一枚岩を意味する)モノリシックなERPは今後数年間で陳腐化する。一つの巨大アプリケーションでは多様なニーズを満たせなくなり、様々なクラウドサービスを組み合わせることが主流になっていく」と本好氏は強調した。

 後半では、ITリーダーが「骨太」のアプリケーション戦略を策定・実行するための方策を説明した。環境変化に即応できることを「柔」とし、「幅広い視野で情報を入手し、入手したらすぐに最初の一歩を踏み出すことが重要だ」と本好氏は述べた。さらに長期間ぶれないコンセプトを持つことを「剛」とし、柔と剛を両立させることが欠かせないとした。

 「東京スカイツリーのように、よくできた建築物、アーキテクチャは二律背反を高度に両立させている。畑違いの業種から学べることは多い」と本好氏は述べ、講演を締めくくった。