写真●アビームコンサルティング プロセス&テクノロジー第4事業部 事業部長 兼 ビジネスインテリジェンスセクター長 執行役員 プリンシパル 中本雅也氏(撮影:井上 裕康)
写真●アビームコンサルティング プロセス&テクノロジー第4事業部 事業部長 兼 ビジネスインテリジェンスセクター長 執行役員 プリンシパル 中本雅也氏(撮影:井上 裕康)
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 ビッグデータをビジネス戦略に結びつけたいというニーズは高まっているが、果たして企業はデータをうまく活用できているのだろうか。アビームコンサルティング プロセス&テクノロジー第4事業部 事業部長 兼 ビジネスインテリジェンスセクター長 執行役員 プリンシパルの中本雅也氏(写真)は2014年3月4日、日経情報ストラテジーが都内で開催した「データサイエンティスト・ジャパン2014」にて、戦略経営におけるデータ分析について語った。

 ガートナーが2013年3月に発表した調査結果によると、CIOの2013年におけるテクノロジーの優先度トップとなったのが、アナリティクスとビジネスインテリジェンス(BI)だったという。「このように、データ活用のニーズは高まっているものの、実際にはデータはサービスの一部機能や分析の一部にしか使われておらず、戦略というより戦術的にしか活用されていない」と中本氏は指摘する。

 中本氏によると、データ分析をビジネス戦略に生かすには「企業BI力」を高める必要があるという。企業BI力とは、分析だけでなく、戦略や業務運用を継続的に高度化すること。つまり、データ収集と分析を行い、分析結果から得られる知見を元に戦略を策定、意志決定する。さらには、戦略を実行して業務基盤を強化し、データ分析によるPDCAサイクルを構築するIT基盤を整備、高度化していくといったサイクルが重要なのだという。

 その企業BI力を高める役割を果たすのがデータサイエンティストだ。中本氏は、データサイエンティストの定義はまだ不明瞭だとしながらも、「統計解析やテクノロジーを理解し、それらを戦略活用や戦術の展開、施策の実行、効果測定などに活用できる人材のことだ」としている。

 中本氏は、企業BI力を高めて成功した顧客の事例を紹介した。同社の顧客となった高級ブランドチェーンでは、顧客維持率(ロイヤリティ)をより高める要素を把握する必要があった。そこで、顧客データ3000万人分の1年間の購買データ9000万件から顧客ロイヤリティの要因を分析。結果、男性客・女性客共に、女性向け商品を購入する顧客より男性向け商品を購入する顧客の方がロイヤリティが高く、特に女性客で男性向け商品を購入する顧客のロイヤリティが高いことが判明した。男性向け商品が顧客ロイヤリティの向上につながることから、男性向け商品の開発部門と情報共有してマーケティング施策を打つようにしたという。

 また、商品の購入後にアフターサービスを利用した顧客はロイヤル顧客になる可能性が通常の4倍で、アフターサービスを利用した顧客の中でも2回目の購買として既製服を購入した顧客はロイヤル顧客になる可能性が7倍になることも分かった。そこで、アフターサービスを重視し、店舗でのオペレーションを改善したという。

 この顧客の事例でアビームコンサルティングが活用したのが、同社がHyperCube Researchとのライセンス使用契約の下で活用している多次元解析ツール「HyperCube」だ。HyperCubeは、数百に及ぶ分析項目から影響の高い変数の組み合わせを導き出し、成功要因やリスクの根本原因を発見するツール。「従来の分析手法では捨てていた外れ値も含めデータ全体を分析するため、局所的な原因まで特定できる。少数の事象にも大きな価値が隠されている可能性がある」と中本氏は説明、「局所傾向まで洞察し、戦略に直結したビジネスルールが導き出せる時代になってきた」と述べた。