写真●富士通サービスビジネス本部クラウドビジネス推進統括部長横山耕三氏(写真:井上裕康)
写真●富士通サービスビジネス本部クラウドビジネス推進統括部長横山耕三氏(写真:井上裕康)
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 「人工知能は東大模擬試験で偏差値60を取れるところまできた」。2014年2月26日、東京都内で開催中の「Cloud Days Tokyo/ビッグデータEXPO/スマートフォン&タブレット/Security」において、富士通サービスビジネス本部クラウドビジネス推進統括部長横山耕三氏が「今必要とされる“イノベーションのためのクラウド”とは」と題した講演に登壇した(写真)。

 富士通研究所は国立情報学研究所と共同で、東大入試の合格を目指す人工知能「東ロボくん」の開発を進めている。自然言語をコンピュータで理解して、問題を解くというシステムだ。横山統括部長はこの取り組みについて「ICTが実現できることは人間の知的活動に近いところまできた。なぜできるようになったのか。背景にはクラウドとビッグデータの解析技術がある」と言う。

 例えば、富士通の最新スマートフォンの性能は51GFLOPSである。同社が1999年に発売したスーパーコンピュータ「VPP5000U」は9.6GFLOPSだった。「スマートフォンは通信機能を持ったコンピュータになっていると言われるが、その能力は10年ちょっと前のスーパーコンピュータの5倍の能力だ。それを個人が買える時代になっている」(横山統括部長)。

 さらに「コンピュータが質的に変化しただけでなく、生活の様々な場所に浸透してきている」(横山統括部長)。横山統括部長が例として挙げたのが自動車。「コンピュータ制御で燃費がどんどん良くなっている。最近は自動運転などの開発も進んでいる」。このほか、機械を遠隔監視して故障前に対応したり、ペットの健康管理に活用したりといった事例が出てきている。「ネットワークにつながる物がこれからさらに増えていく。2020年には約260億のデバイスがインターネットにつながる。今後ますます人間中心の使い方に変わっていく」(横山統括部長)。

企業では既存資産からの移行が課題に

 イノベーションのゆりかごとなっているICTだが、クラウドなどの新しい仕組みを企業に取り入れていくには課題がある。「これまで投資してきた既存資産が膨らんでいる」(横山統括部長)ことだ。新規のシステムや新規ビジネスであれば、新たなコンピューティングインフラを作れば済む。しかし実際の企業で使うには、既存資産の課題をクリアしないとイノベーションへの障壁となってしまう。

 横山統括部長は「既にICT運用コストは企業のICT投資全体の6~7割を占めるまでになっている。既存資産をどう解決して動かしていくかに取り組んでいきたい」と言う。横山統括部長はこうした既存システムの移行を「モダナイゼーション(近代化)」と位置付ける。「既存環境をどう刷新していくのかユーザーと一緒に考えたい。オンプレミス、パブリッククラウド、プライベートクラウドなど選択肢は様々あるが、どれも良い点、悪い点がある。最適な組み合わせを提案していきたい」(横山統括部長)。