写真●アマゾン データ サービス ジャパンの長崎忠雄代表取締役社長
写真●アマゾン データ サービス ジャパンの長崎忠雄代表取締役社長
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 「『クラウドファースト』は、予算のオーバー、スケジュールのオーバーという、従来のITが抱えていた2つの課題を解消する」――。アマゾン データ サービス ジャパンの長崎忠雄代表取締役社長は、東京都内で開催中の「Cloud Days Tokyo/ビッグデータEXPO/スマートフォン&タブレット/Security」の基調講演で檀上に立ち、冒頭でこのように述べた(写真)。

 クラウドファーストとは、「Amazon Web Services(AWS)」のようなパブリッククラウドの利用を前提としたITインフラのあり方、考え方、構築手法などを意味する。従来、企業のシステム部門は自前でサーバーやネットワーク機器を調達し、それらをデータセンターに設置してシステムを構築・運用してきた。ITインフラは所有することが当たり前だったのである。

 こうした従来のITインフラのあり方に、長崎社長は疑問を投げかける。「ITインフラを持つこと、システムを構築することが、企業の本業なのか。そうではない。ITインフラやシステムをどう利用するのか、そこからどういったビジネス的な価値を創造していくのか。そういったことに、企業は専念していくべきではないのか」。そして、長崎社長は、こう結論付ける。「ITインフラは所有から利用するものへと変わった」。

 結論の裏付けとして挙げたのが、IDCジャパンが実施したIT投資に関連した調査報告である。スクリーンに映し出されたIT全体の投資額のグラフは、2012年から2017年までほぼ横ばいの推移を示していた。だが、クラウドコンピューティングの分野に限ると、2017年の投資額は2012年比3.4倍と大幅に伸びると予測されていた。

 さらに長崎社長が裏付けとして挙げたのは、AWSそのものの導入実績である。日本国内では既に2万社以上、全世界では190か国で数十万社が導入している。導入企業の事業規模は、スタートアップから大企業、官公庁、教育機関など幅広い。「クラウドでは使った分だけが課金されるので、会社の事業規模にかかわらずITインフラを調達しやすくなったからだ」と、長崎社長は分析する。

 企業がクラウドを選択する理由として長崎社長が挙げたのは、「初期投資が不要」「運用コストが従来よりも安価」「キャパシティ予測が不要」「低コストなのに構築したシステムの導入効果を得られやすい」「事業の本業に専念できる」の5つである。ただし、同じクラウドでも企業が自社で構築・運用する「プライベートクラウド」では、「こうしたメリットを享受するのは難しい」と、長崎社長は注意を促した。