写真●住友精密工業が機械学習技術の実証実験を行っている、大分県の農家でのみかん栽培の様子。同社製のセンサーネットワーク機器「neoMOTE」を用いている。
写真●住友精密工業が機械学習技術の実証実験を行っている、大分県の農家でのみかん栽培の様子。同社製のセンサーネットワーク機器「neoMOTE」を用いている。
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 センサーネットワーク事業を手掛ける住友精密工業は、同社の農業向けセンサーネットワークサービスの実証実験に、Preferred Infrastructure(PFI)の機械学習エンジン「Jubatus」を採用した(PFIによる発表資料)。設備の異常検知や最適制御などに用いる。

 実証実験では、大分県の農家と協業し、みかん栽培のビニールハウスの温度管理や空調設備の異常検知にJubatusの適用を試行している(写真)。現在はセンサーで取得したデータに対し、オフラインで学習エンジンを適用しているが、今後、実活用することを狙う。

 最初に試行しているのは、空調設備の異常検知である。一般にハウスみかんの栽培では、みかんの成長ステージに合わせて農家が1~2週間単位で設定温度を変える。設定温度を頻繁に変える中、温度データから空調設備の故障をいかに精度高く、安定的に検出するかが課題だった。

 ハウス内が特定の温度であっても、時期によってそれが正常値か異常値かは変わってくる。温度異常が起きる要因にはボイラーや換気用のファンの故障のほか、換気用のファンに鳥が挟まって換気ができなくなるといった事象まで多様である。

 万一、空調設備が故障してハウス内の温度が上がりすぎてしまうと、みかんは傷んでしまう。緊急の場合は、ハウスのビニールを手で破って温度を下げることもあるほどだという。「現状でも温度データから故障を検知するアラートシステムは使われているが、故障とみなすしきい値は手動設定である上、アラートが頻繁に起きて面倒といった理由で、システム自体を切ってしまう農家もあった」(住友精密工業 センサネットワーク事業室次長の宮本哲氏)。こうしたしきい値設定を自動化するために、今回、Jubatusに着目した。

 学習自体は、1カ月ごとの温度データを用いて行った。異常値を含まない正常なデータのみをJubatusに与え、その学習結果を用いて温度の外れ値検出を行った結果、月ごとに異なる異常値の検知に成功したという。

 今回の実験では、事前に数年分の温度データを得られていたためオフラインでの学習を行ったが、今後はJubatusの特徴であるオンライン学習が役立つとみている。「1年分の温度データなどを事前に得られないケースやカスタマイズなどの手間を掛けにくいケースでは、オンライン学習が有効だろう」(住友精密の宮本氏)という。

 ハウスみかんの栽培では燃料代が大きなコストを占めるため、今後は燃料センサーなどを組み合わせるなどして、燃料コストを最適化する用途にも機械学習エンジンを活用していく計画である。