タイ政府は現地時間の2014年1月22日、首都バンコクなどで非常事態を宣言した。首都に非常事態宣言が出されたのは2010年以来。日系ICT企業各社は現時点で営業を続けているが、先行きは不透明だ。

 オフィスの所在地がデモ地域に当たるNTTデータ(タイ)は、コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を発動。オフィスを閉鎖し、社員は臨時オフィスや自宅で業務を続けているという。サービスは通常通り提供している。「有事における社員の安全、顧客へのサービス提供を第一に考え、実施に踏み切った」と、NTTデータ(タイ)の松岡靖CEO(最高経営責任者)は話す。

 富士通のタイ拠点である富士通システムズビジネス(タイランド)は、通常営業を続けている。オフィスの目の前にある交差点が封鎖されているものの、鉄道などは運行しており、社員の通勤などに大きな影響はないという。同社の國丸昌之社長は、「緊急時の非常連絡網や一斉同報の仕組みは整備済みだ。オフィスを閉鎖しなければならない状況になった場合も、BCP(事業継続計画)の準備はできている」という。

 NTTコミュニケーションズ(タイ)も通常通り営業しており、ほぼ全社員が出社しているという。毎朝の出勤可否をシステム上で報告させているほか、「都心外にあるオペレーションセンターを、緊急時のオフィスとして使用できるようにしてある」(NTTコミュニケーションズ(タイ)の宮崎一ディレクター)。

 NECや野村総合研究所(NRI)の現地拠点も、現時点で通常営業中だという。「現地拠点長とは定期的に連絡を取っている。出社待機などの判断は、現地側で迅速に対応するように話をしている」(NRI)という。

 2014年2月2日には総選挙が実施される予定。「2日までは緊迫した状況が続くだろう」(タイの日系ICT企業幹部)。治安部隊とデモ隊との衝突も懸念される。別の日系ICT企業幹部によると、「タイ現地においても、今後の見通しは誰にも分からない状況」だとしている。