写真1●富士通の阪井洋之統合商品戦略本部本部長
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写真2●イオンアグリ創造の福永庸明社長
写真2●イオンアグリ創造の福永庸明社長
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 富士通は2014年1月22日、自社が提供する農業クラウド「Akisai」の説明会を開き、利用企業での成果を公表した。

 Akisaiは、2012年10月に提供を開始した、農産物の生産・販売・経営の管理に必要な業務アプリケーションを提供するサービス。同社によると、提供開始から1年半ほどが過ぎ、1000社を超える企業から問い合わせを受け、160社が利用しているという。

 農業は、これまでデータに基づく管理やデータ分析が十分に浸透していない産業分野。「農業生産の現場でAkisaiが活用されることで、経営面でプラスの実績が出るケースも出てきている」と、富士通の阪井洋之統合商品戦略本部本部長は説明する。

 Akisaiの利用企業では、農場の気温や作業のデータを収集し、収穫時期の予測や作業内容の分析を行うことで、売り上げを向上させたり、作業効率を高めたりしているという。

 キャベツなどの生産を手がける宮崎県の新福青果は、Akisaiを使い、積算温度(毎日の平均気温を加算した値)をチェックすることで収穫時期を予測。それを踏まえて栽培や要員の計画を立てることで、適切なタイミングで収穫することに成功。クラウド利用前に比べて、年間のキャベツの収穫量・売上高を30%向上できた。

 滋賀県の水稲栽培農場、フクハラファームは、Akisaiで田植えに関する作業実績を細かく管理。分析したところ、担当者が手で植える非効率な作業の比率が高いと分かった。原因を探ると、田植えの前工程である代かきにあると判明。代かきを丁寧にするなど対策を講じることで、手で植える作業時間を大幅に減らせたという。

 イオングループで、全国十数カ所に直営農場を持ち野菜などの栽培を手がけるイオンアグリ創造も、Akisaiでノウハウを蓄積できているという。同社の福永庸明社長は説明会の場で「2009年設立当初、若手中心とはいえ、スーパーなどで魚をさばくといった、農業とは無縁の仕事を担当していたメンバーばかりだった」と明かした。ノウハウの蓄積をするためにも、ITで農場を見える化する必要があり、Akisaiを採用したという。

 全国に分散する農場のデータをAkisaiで一元管理することによって、農場ごとに収穫量の分析ができるようになったという。収穫量が最も高い農場もつかめ、その理由を栽培状況などの詳細データから探った。

 その結果、収穫量が高い農場は、苗を適切な時期に植えていたことや、土づくりを十分に行っていたことが判明。ベストプラクティスとして展開することができた。また、収穫量が最も少なかった農場の原因究明にも活用。病害虫対策を計画的に行うといった収穫量アップの対策を立てて、実践しているという。

 イオンアグリ創造では今後、農作業の管理データと会計データを組み合わせて経営分析できるようにしていく。福永社長は、「将来的には農場の畝ごとにコストをつかめるようにして、戦略を練ることができるような仕組みを作り上げたい」と意気込みを語った。