写真1●100人分の処理能力がある梱包設備「I-Pack」
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写真2●小さな商品をラップのような透明なフィルムでくるんで梱包する「Pack in Box」。商品は段ボールの台紙の上に載っている
写真2●小さな商品をラップのような透明なフィルムでくるんで梱包する「Pack in Box」。商品は段ボールの台紙の上に載っている
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写真3●熱処理を加えてフィルムを圧縮し、「Pack in Box」から箱詰め前の商品が出てきたところ
写真3●熱処理を加えてフィルムを圧縮し、「Pack in Box」から箱詰め前の商品が出てきたところ
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 アスクルは2013年11月7日、7月末に稼働したばかりの最新物流センター「ASKUL Logi PARK首都圏」に初めて取引先を招き、見学会を開催した。加工食品や飲料、日用品などの取引先が約80社、総勢で約150人が参加。埼玉県三芳町にあるセンターに集結した。

 冒頭で岩田彰一郎代表取締役社長兼CEOがあいさつし、ASKUL Logi PARK首都圏を「最新の物流“工場”」と表現。日用品EC(電子商取引)に特化した戦略拠点であることを取引先に強調した。

 物流網の心臓部に当たるこのセンターは、消費者が(書籍などの1品買いではなく)日常使いする複数の商品をネット通販でまとめて購入することを前提に設計されている。注文があった日用品や飲料などの品物を「アセンブリ(組み立て)」して1つの箱に詰め、消費者(注文)ごとの「オンリーワンBOX」に仕上げて届けている。岩田社長がここを工場と呼ぶのは、アセンブリ工程の存在が、このセンターの大きな特徴になっているからだ。

 「我々はいち早く“第2世代”のECに向かう。LOHACO(ロハコ)はそこでナンバーワンを狙う」と岩田社長は宣言。ヤフーと共同で始めた消費者向けのネット通販であるLOHACOの巻き返しに向けて、見学会に参加した取引先には協力を求めた。ここでいう第2世代とは「複数商品のワンボックス出荷」を指しており、アスクル独自の表現である。

 アセンブリを突き詰めるため、岩田社長は「ユニットロードとパレチゼーション」という言葉を使って、秘訣を説明した。要は、消費者がネット通販を使って、「1週間の生活のなかで必要とする商品の数量分」だけを購入するのに適した商品のパッケージングや出荷体制作りを強力に推進するということだ。そのために適量のユニットがいくつなのかを追求していく。こうして生活必需品を毎週、毎週LOHACOで購入してもらう「週一(週1回)購買」を目論む。

 そこで取引先には、例えばペットボトル飲料なら(段ボールではなく)1週間でちょうど飲み切れる6本1パック(シュリンクパック)での工場出荷に変えてもらうことなどが考えられる。既にそうした取り組みを始めている商品もある。その方が消費者がお得に買えて、なおかつ出荷がより速くできて、さらに自宅に届いた時の「荷姿」もきれい、という状況を作り出そうとしている。

 「箱を開けた時の印象まで考えて、物流を設計している」と、才田啓三ECR本部ECR戦略企画部長は語る。複数商品の購買では箱の中がぐちゃぐちゃになることもあり、それはクレームにつながりかねない。

約200億円かけた最新の自動化センター

 ASKUL Logi PARK首都圏は2013年末までに、7万アイテムがそろう“巨大な店舗”でもあるといえる。現時点で既に6万アイテム以上の商品が並ぶ。首都圏に住むLOHACOの利用者には、ここから商品を届けている。午前11時までの注文については当日配送サービスを提供しており、最短20分で出荷できる体制を敷いている。遅くとも12時半までには出荷して、当日配送に間に合わせているという。

 ASKUL Logi PARK首都圏の投資額は、202億円と巨額だ。日本初導入の自動化設備も積極的に採用し、人手を極力省いてサービス品質を一定水準に維持。かつ、ローコスト運営を進めている。それでいて、欠品率0.2%、平均在庫日数16日を達成している。

 センター見学のハイライトは、何と言っても最後の梱包工程だ。従来はこの工程がボトルネックになって、かつたくさんの人手を必要とした。そこでアスクルは今回、2種類の自動化設備を導入して、劇的な改善を図った。

 1つは、複数商品の詰め込みが済んだ段ボール箱を高さを勘案して自動的に折りたたみ、ふたをして閉じる梱包設備を用意した。日本では初めて稼働した、フランス製のマシンで「I-Pack」と呼ばれる(写真1)。

 もう1つは、少量でしかも比較的小さな商品をラップのような透明なフィルムでくるんで梱包する設備「Pack in Box」(写真2)。商品が段ボールの台紙の上に置かれて、ラップのようなものにくるまれた状態で自宅に届く、そのための設備だ。ネット通販の利用者には既におなじみだろう。フィルムをかけた後は熱処理を加えて、フィルムを圧縮させて固定する(写真3)。

 前者のI-Packは1時間に800箱の梱包が可能で、アスクルは合計4台を設置済み。1時間に3200箱を処理できるようにした。これは、1時間に30箱ほどである人手の作業の、実に100倍の処理能力に相当する。もし自動化設備がなかったら、この場所には100人以上の作業者を配置する必要がある。そう思うと、その効率性に驚く。センターの風景は、全く違うものになっていたはずだ。

 I-PackとPack in Box、そして人手による梱包の比率は2:1:1。人手が25%残るのは、非常に大きな商品の梱包は機械が苦手としており、ここは人手の方がはるかに効率的だからである。

 見学会は梱包工程の説明に時間を割いたが、このほかにデジタルピッキングの工程などを紹介していた。