2013年11月6日の第61回民間放送全国大会で、テレビの視聴スタイルの変化をテーマにしたシンポジウムが開催された。

 放送事業者とポータルサイト運営事業者、ソーシャルゲーム会社、視聴率測定会社がパネリストとして参加し、それぞれの立場から意見を述べた。モデレーターは、ジャーナリストの津山恵子氏が務めた。

「プレイスシフトへの対応によって市場の裾野は拡大」とDeNAの南場氏

 ディー・エヌ・エー(DeNA)の取締役 ファウンダーの南場智子氏は、「スマホやタブレット端末の普及によって、日常生活における細切れの時間を使ってコンテンツを楽しめるようになった。スマホなどのユーザーは、自分の嗜好に合うものを選んでいる」とした。さらに「1回のプレイ時間が数分間程度のソーシャルゲームの提供により、ユーザーの裾野を拡大できた」「プレイスシフトへの対応によって市場の裾野は拡大した」と述べた。

 ビデオリサーチの取締役 ソリューション推進局長兼インタラクティブ事業戦略室長である尾関光司氏は、テレビ番組のタイムシフト視聴の調査結果を報告した。視聴時間全体(リアルタイム視聴時間とタイムシフト視聴時間の合計)に占めるタイムシフト視聴時間の割合を調べたところ、「4歳から12歳からなるキッズ層と、13歳から19歳までのティーンズ層の数値が高いという結果が出た」という。

 ヤフーの副社長 最高執行責任者(COO)の川邊健太郎氏は、動画配信サイトの「GyaO!」(ヤフーがGyaO社と協力して運営)について、「テレビ番組のタイムシフト視聴の受け皿になれればと思っている」とした。GyaO!では、1日限定で連続テレビドラマを無料配信して翌日以降の有料サービス利用件数増加につなげたり、テレビ番組のサイドストーリーの動画を配信したりといった取り組みを進めているという。

 世帯視聴率調査でチャンネルに関係なく放送中のテレビ番組を見ていた世帯の割合であるHUT(Households Using Television)は、10年前に比べて下がっている。フジテレビジョンの編成制作局編成担当局長の山口真氏は、「外出先でスマートフォンなどを使って番組を見る宅外視聴をどのようにして視聴率にカウントするかが課題」と述べた。

 シンポジウムの締めくくりでは、パネリストらによるテレビ番組への提言が行われた。ヤフーの川邊氏は、放送の視聴測定指標であるGRPにインターネット上における接触指標を含めた統合GRPの導入を提案した。「インターネット上では様々な測定ができる。GRPに統合してほしい」とアピールした。ビデオリサーチの尾関氏は、視聴者に自分と関係があると思ってもらえるような番組の重要性を指摘した。

 DeNAの南場氏は、「テレビが何を取り扱うかはインターネットユーザーにとって事件。事件提供の意識を持つことを提案したい」と述べた。フジテレビの山口氏は、デジタル機器が普及した環境において視聴者に限られた可処分時間内で放送事業者のコンテンツを楽しんでもらうための取り組みが放送局側に必要という考えを示した。「どうしても見たいと思ってもらえる力のある番組作りと、視聴者の小ピース化する自由時間に入り込むことを意識するべき」とした。