写真1●大阪ガス情報通信部ビジネスアナリシスセンターの河本薫所長
写真1●大阪ガス情報通信部ビジネスアナリシスセンターの河本薫所長
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写真2●大阪ガス行動観察研究所の松波晴人所長
写真2●大阪ガス行動観察研究所の松波晴人所長
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写真3●河本薫所長(左)と松波晴人所長(右)
写真3●河本薫所長(左)と松波晴人所長(右)
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 大阪ガスとオージス総研は2013年11月6日、都内で「ビッグデータ分析×行動観察、イノベーションを創出する分析コラボレーションセミナー」を開催した。

 登壇したのは、大阪ガス情報通信部ビジネスアナリシスセンターの河本薫所長と、大阪ガス行動観察研究所の松波晴人所長。話題のビッグデータ分析とその対極にある分析手法ともいえる「行動観察」の双方の視点からビッグデータを語り、そのうえでイノベーションの創出について議論した(関連記事:あなたの行動をビッグデータはどれだけ記録できているか、履歴は「ほんの一部」にすぎない)。

 東京・秋葉原の会場には、2人のトップ分析者の“共演”に立ち会おうと200人以上の聴衆が集まった。

 河本所長は、日経情報ストラテジーが選出する「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」の初代受賞者に選ばれたばかり(関連記事:年間ベストのCIOとデータサイエンティストが“共演”)。この日は、ビッグデータと機械学習(分析プロセスを機械に任せること)についても触れるなど、広いテーマを取り上げた。

 河本所長は「多くの企業はビッグデータどころか、リトルデータすら使えていない場合が多い。手つかずのリトルデータがまだいっぱいある」と、聴衆には足元をもう一度見直すように呼びかけた。そのうえで「我々の目的はビジネス課題を解くこと。データ分析は、数ある問題解決手法の1つでしかない」とくぎを刺し、ことさらにビッグデータ分析ばかりが強調される昨今の状況に、あえて警鐘を鳴らしてみせた。

 講演では、データ分析でできることと、できないことを例を挙げて紹介(写真1)。(データだけを見るのではなく)視野を広く持つことの大切さや現場のKKD(勘と経験と度胸)に目を向けることの重要性を説いた。

 続いて、行動観察に詳しい松波所長が登場。IT業界関係者も大勢含まれていたというこの日のセミナー参加者の中には、「行動観察」については初めて詳しく触れた人が多数いたため、松波所長は日本に観光に来た中国人旅行者に同行して、旅先での彼ら彼女らの行動をつぶさに観察したときの実例などを挙げて、まずは行動観察について興味を引いた。

 そして本題である行動観察とビッグデータの関係性について、「n数(サンプル数=観察数)」が少ない行動観察は1つの対象を深く分析する手法であり、「どうしてこの人はこういう行動を取ったのか」という理由を探る手段であると説明(写真2)。n数が巨大なビッグデータ分析とは対極にありながら、行動観察はビッグデータ分析だけでは分からない「Why(なぜ=行動の理由)」を知るアプローチであることを強調した。

 大阪ガスで全く異なる分析手法を極める河本所長と松波所長の2人は、もともとは席を並べて働いていた職場仲間だという(写真3)。今はともに、別々の社内組織の「所長」という立場にあるが、企業の「ビジネス課題を解く」という共通のミッションに向かう。