総務省は2013年11月1日、「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」を立ち上げ、第1回会合を開催した。主に携帯電話のネット接続サービスで通信速度などに対する消費者の苦情が増えていることを踏まえ、実態に即した通信品質を計測し、継続的に公開する仕組みを作る狙いである。まず2014年3月をメドに実効速度の計測方法などについて一次報告をまとめる。その後も、予算が確保できれば実際にフィールドで計測を実施して議論を深めるなど、2015年3月までの長期開催を計画している。

 総務省によると、スマートフォンの普及に伴い携帯電話では「広告などでうたう通信速度が実態と違っている」といった消費者の苦情が増えている。国民生活センターと全国の消費生活センターの集計で、通信速度に関する苦情・相談件数はスマホのカテゴリーでは8位、モバイルデータ通信のカテゴリーでは2位と多くなっている。広告や顧客勧誘でうたわれる理論上の最大通信速度と実効速度とのかい離が大きいためだ。

 総務省は利用者が実効速度など正確な情報に触れて契約できるよう、広告表示などでは実効速度を併記するなどなんらかの規制が必要と考えており、実効速度の計測の仕方も含めて研究会での議論を求めた。特に実効速度については、計測手法と計測条件、計測データのサンプリングやスクリーニング手法を具体的に検討してもらう。

 会合では、野村総合研究所の北俊一上席コンサルタントが米国と英国、フランス、ドイツの各国で政府や通信事業者の取り組み状況を紹介した。北氏によれば、各国とも政府機関が事業者の固定ブロードバンドサービスの実効速度を計測しており、広告や会社側公表値などとに大きなかい離がないよう規制している。例えば英国は実行速度の10倍を超えるような最大速度を広告には使えない。2010年から対象を無線データ通信に広げている。米国も同様の規制を実施し、携帯電話の計測も近く始める計画だ。

 会合には日本の携帯電話4社の担当者も参加し、通信速度を計測、モニターしている現状の取り組みのほか、各社が公表のためにふさわしいと考える速度計測の方法を説明した。事業者間の公平さを担保した上での速度計測と公表には、各社とも総論で賛成する意見だった。