写真●情報処理学会が開催したビッグデータ活用実務フォーラム
写真●情報処理学会が開催したビッグデータ活用実務フォーラム
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 情報処理学会は2013年10月30日、東京都内でビッグデータを活用する現場担当者を対象にした実務フォーラムを初めて開催した(写真)。

 ビッグデータを活用しようという動きは、ITの分野にとどまらず、医学や農学など多岐にわたりつつある。代表者である東京農工大学の石井一夫特任教授は「ビッグデータ活用に関心は集まっているものの、実務に携わる人材の育成や実務家同士の情報交換の場が少ない。そこでこのフォーラムを立ち上げた」と話す。

 第1回目の実務フォーラムでは、石井特任教授のほか、アマゾン データ サービス ジャパンの吉荒祐一ソリューションアーキテクトと、ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所(USP研究所)の當仲寛哲所長が講演した。

 「ビッグデータを活用範囲は、ネットの広告やレコメンデーションだけではない。IT以外の産業に展開して活用を進めないと、一過性のはやりに終わってしまう」。こう語る石井特任教授は、医療や農業、環境分野でのビッグデータ活用状況を講演で紹介した。

 特に医療分野ではHadoopなどを使ったDNAのビッグデータ解析手法が確立されてきているという。「10mlほどの人の血液から3時間ほどのDNA分析で健康診断ができるめどが立っている。数十万人のがん患者の協力を得て診断法を確立しようとする動きもある」と話す。

 続くアマゾンの吉荒氏の講演では、クラウドサービスである、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を使ったビッグデータ活用事例が紹介された。

 その成功事例の1つが、2012年の米大統領選挙でバラク・オバマ陣営が導入した選挙キャンペーンの分析システム。「ネット上の動きなどすべてを測定して分析することと、分析結果に沿って行動するというトップのコミットメントがあったので成功した」と、吉荒氏は明かした。

 最後にUSP研究所の當仲所長が、自社開発のソフト製品を使ったビッグデータ処理のデモンストレーションを行った。ソフト製品は、同研究所が独自で確立した「ユニケージ開発手法」で作られている。この開発手法は、UNIXのシェルスクリプトとテキストファイルで、アプリケーションを開発するというものだ。

 當仲所長は「ミドルウエアなどの中間層がないので、ハードウエアのリソースを限界まで使い倒せる。ビッグデータの処理プログラムも安く早く柔軟に作れる」と、ビッグデータ処理にユニケージ開発手法を適用するメリットを語る。

 デモンストレーションでは、5台のサーバーに分散配置した100億件のデータの検索処理を行った。処理要求を出すと1秒で結果が出た。「100億件と言えば、世界中にいるすべての人のデータ。そんなビッグデータも5台のサーバーで処理できる」と當仲所長は話す。

 第1回のフォーラムには、統計分析の担当者など30人近くが集まった。フォーラムは今後、2014年2月に情報処理学会が開催するイベント、ソフトウエアジャパン2014の中でも実施する予定だ。