「パーソナルデータに関する検討会」(座長=堀部政男・一橋大学名誉教授)は2013年10月29日に第3回会合を開催した。経済同友会の伊藤清彦・常務理事と日本消費者協会の松岡萬里野理事長はともに、JR東日本が交通系ICカード「Suica」の乗降履歴を第三者に譲渡しようとした事例でパーソナルデータの流通に国民が不安を感じたとして、双方の観点から法制度の改正が必要だと述べた。

 経済同友会の伊藤常務理事は、法制度について「プライバシー保護とビジネスの両立を図る枠組みは米国連邦取引委員会(FTC)の3原則をベースに検討すべきと考える」と指摘。また、日本消費者協会の松岡理事長も「パーソナルデータの利活用を否定するわけではなく、活用してよりよい技術の進展をしていただきたい」と述べた上で、パーソナルデータの保護の範囲を法的に明確にするなど、個人情報保護法の早期改正を求めた。

 さらに慶応義塾大学の新保史生教授は、OECD(経済協力開発機構)やEU(欧州連合)などの動きを踏まえて「国際基準に対応した執行体制や越境協力が不可欠」と指摘。東京大学大学院法学政治学研究科の宍戸常寿教授は、パーソナルデータに関する独立第三者機関について、現行の個人情報保護法の主務大臣と第三者機関の権限調整の方法を例示した。

 参考人として出席した第二東京弁護士会の水町雅子弁護士は、パーソナルデータの取り扱いを明示する具体策として、日本版プライバシー影響評価である情報保護評価書を公示して、サービス実施前にユーザーと意見調整する方法を提案。データを事業者間で共同利用している例について、「共同利用はユーザーが拒否できるオプトアウトよりも要件が厳しいはずなのに、実際はオプトアウトしないでいいように共同利用を悪用しているという例もみられる」として、要件の明確化を求めた。

 会合に欠席した全国地域婦人団体連絡協議会の長田三紀事務局次長は、データの利活用の目的と保管期間の明示・開示や消去請求権の規定求める書面を提出した。

 その後の質疑応答で、慶応大学の新保教授は、現行法ではデータの第三者提供について、オプトアウトの機会を提供している場合、委託先や合併などによる提供や共同利用では本人同意が不要だが、EUでは第三者提供について本人同意が原則であるうえに、ダイレクトマーケティングではオプトインによる本人同意の要件を課していると指摘。「規制が厳しいところに結果的に依らなければならないのであれば、我が国もその点を踏まえた規制見直しが必要」と語った。

 山本一太IT政策担当大臣は冒頭の挨拶で会合の2回目について「かなり長い時間大臣レクも受けた。2回目で相当議論の骨格が整備された」とし、「次回は、論点に対する見直し方針案を提示することになる」と述べた。