会見で買収の狙いを説明したNTTコミュニケーションズの有馬彰社長
会見で買収の狙いを説明したNTTコミュニケーションズの有馬彰社長
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 NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は2013年10月28日、クラウドコンピューティング事業を強化するため、米国の通信事業者2社の株式を取得することで2社の株主とそれぞれ合意したと発表した。投資額は合計9億ドル弱で、データセンター(DC)運営の米RagingWire Data Centers(レイジングワイヤ・データ・センターズ)社の株式の約80%を約3億5000万ドルで、国際データ通信サービスを提供する米Virtela Technology Services(バーテラ・テクノロジー・サービシズ)社の全株式を約5億2500万ドルでそれぞれ取得し、子会社化する。

 2社は共に2000年創業の新興事業者だが、技術力を強みに運営の効率化などに優れ、ハイテク企業の顧客が多いという。NTTコムの有馬彰社長は「買収によって、米AT&Tや米Verizon Communications、英BT Group、オレンジ(仏France Telecomの法人向けを含むサービスブランド)という国際データ通信の大手4社と、規模でかなり接近できる。最新技術を持つ買収2社と運営を統合したりネットワークを相互接続したりすることで、(大手4社など)既存事業者より価格競争力で優位に立てると期待している」と意気込みを語った。

 RagingWireは1棟あたりのサーバー室面積で8000平方メートル級の大規模DCを西海岸と東海岸に合計3棟を持つ。買収後にNTTコムが米国で持つDCのサーバー室面積は2万平方メートルから4万3000平方メートルと倍以上に増える。いずれも1棟あたりの面積はNTTコムが持つDCより相当に大きく、電力供給などにも最新技術を導入している。NTTコムはRagingWireのノウハウを取り込み、両社のDC運営の一体化を進める考えだ。将来的には増設を予定するRagingWireの施設を中核に据え、NTTコムのDCのうち小規模のものは閉鎖することも検討する。

 Virtelaは、複数の通信事業者から借りた回線を組み合わせて通信サービスを提供する新興の「仮想通信事業者(VNO)」で、196の国や地域でVPN(仮想専用線)やクラウド型のマネージドネットワークサービスなどを提供している。有馬社長によると、その強みは、運用を効率化するための自動化技術や国際的な体制作りだという。196の国や地域に展開している国際通信網を「我々から見ればわずか260人という少人数で運用し、うち120人はインドのムンバイで監視業務などを集約するなど国際分業体制を築いている」(有馬社長)。同社とはまずネットワークを相互接続し、順次運営ノウハウも取り込んでいく。

 2013年度の予想売上高はRagingWireが8500万ドル、Virtelaが1億2500万ドルで、2社とも利益を計上しているという。

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■変更履歴
最終段落において当初「Virtelaが5億2500万ドル」としていましたが、「Virtelaが1億2500万ドル」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2013/10/29 18:30]