写真1●NTT東日本関東病院産婦人科主任医長 杉田匡聡氏
写真1●NTT東日本関東病院産婦人科主任医長 杉田匡聡氏
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写真2●妊婦手帳の主要6機能
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 2013年10月18日と19日の2日間香川県高松市で開催された第17回日本遠隔医療学会学術大会で、NTT東日本関東病院の産婦人科主任医長である杉田匡聡氏が、スマートフォンで利用するアプリ「妊婦手帳」(仮称)に関する発表を行った(写真1)。

 このアプリは、NTT東日本関東病院産婦人科とNTTドコモ、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズで共同開発した。まず4者が協力して、公募に応じた妊婦や分娩経験者に聞き取り調査を実施。その後病院内で実証実験を行った。

 杉田氏は「当院の倫理委員会の承認を受けた上で、このアプリをインストールしたスマートフォンを31人の妊婦に2か月間貸し出した」と説明。アプリの機能は、毎日更新される(1)妊娠週数カウンターと(2)胎児の睡眠リズムなどを知らせるToday's Baby、毎週更新される(3)よくあるQ&A集、(4)病院からの宿題などの形で提案されるTo Doリスト、(5)毎日入力する妊婦の体調(気分、体重、睡眠、便通、つわりなど)、(6)病院からのお知らせ(随時配信)となっている(写真2)。病院側は、主に(4)と(5)をタブレット端末で確認し、アプリを妊婦の自己管理を促すためのツールとして利用した。

 利用者を対象に調査したところ、「不安が軽減した」という回答が6割を超え、「ネット検索をしなくても必要な情報を取得できた」点を評価する声があった。知識を深めることができたという回答は9割以上に達し、「電車の中でも知識が得られた」「病院を通じての情報なので信用できた」との声が寄せられた。機能の中では、必要な情報が妊娠週数に合わせて送られるToday's Baby、Q&A、To Doリストが好評。9割がアプリの継続利用を希望したという。利用状況では、朝に妊娠週数カウンターやToday's Babyをチェックし、夜は体調入力や病院からのお知らせを見る、という傾向がはっきり表れた。

 杉田氏は「アプリで普段から情報を交換していれば、医療者側に余裕が生じることで、もっと密度の高い健診ができる可能性がある。なぜなら、これらの情報交換以外に時間を割くことができるから」と解説。「スマートフォンアプリの操作に抵抗のない、妊娠可能な世代に対するこうした情報提供は、非常に有用だと考えられる。また乳児にとっては成長後、生まれたときからの自分の情報をアプリで見られるのが普通、という環境になる。これは、EHR(Electronic Health Record)やPHR(Personal Health Record)が定着するベースになり得る」と有用性を評価した。

 この「妊婦手帳」(仮称)は、商品化の計画が進んでいる。早ければ年内にも公開される予定。価格や提供方法などは未定。