写真1●遠隔地診療のためのシステム「ドクターコム」を利用して講演する国立天文台ハワイ観測所の岩田生(いくる)准教授
写真1●遠隔地診療のためのシステム「ドクターコム」を利用して講演する国立天文台ハワイ観測所の岩田生(いくる)准教授
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写真2●パソコンのWebブラウザーやタブレット用の健康管理アプリを通じて、データをグラフ化して閲覧可能
写真2●パソコンのWebブラウザーやタブレット用の健康管理アプリを通じて、データをグラフ化して閲覧可能
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 2013年10月18日と19日の2日間にわたって、香川県高松市で開催された「第18回国際遠隔医療学会・第17回日本遠隔医療学会学術大会」で、米国ハワイ島にある国立天文台ハワイ観測所と香川大学医学部の間で実施される予定の遠隔健康管理についてのランチョンセミナー(主催:インテル・日本マイクロソフト)が行われた。

 18日に行われたセミナーでは、実際に利用される予定の遠隔医療システムを利用して、国立天文台ハワイ観測所の岩田生(いくる)准教授がネット経由で講演した(写真1)。

 国立天文台ハワイ観測所は、標高4200mのマウナケア山頂にある「すばる望遠鏡」と、研究・開発・事務を行う「ヒロ山麓施設」から成る。この二つの施設に、無線送信機能を持つ歩数計、血圧計、体重計を設置。職員が定期的にバイタルデータを計測すると、数値が自動的に送信され、「かがわ遠隔医療ネットワーク」(K-MIX:Kagawa Medical Internet eXchange)のサーバーに蓄積される。

 これらのデータは香川大で閲覧できるほか、NTTアイティとNTT東日本が運営する「ひかり健康相談」を通じての閲覧も可能。観測所の職員は、パソコンのWebブラウザーやタブレット用の健康管理アプリを通じて、データをグラフ化して閲覧できる(写真2)。

 これとは別に、ブイキューブのWeb会議システム「V-CUBE」を応用して香川大が開発した、遠隔地診療のためのシステム「ドクターコム」も利用。大学側で異常値を発見した場合に健康相談を実施するのに加えて、職員からの要望があった場合も相談を受ける。香川大学名誉教授・同瀬戸内圏研究センター特任教授の原量宏氏は「すばる天文台はネットワーク環境がよく、高度な遠隔健康管理ができる」と説明する。

 遠隔医療導入のきっかけは、K-MIXで遠隔医療を実践していることを知った観測所長(教授)の有本信雄氏から、香川大の原氏あてに、職員の健康管理を依頼するメールが来たことだという。所長が帰国した際に、2氏が実際に面会して話し合った結果、遠隔健康管理の実施を決めたという。

 岩田准教授は職場の環境を「約100人の職員が働いているが、働く時間や内容がバラバラ。天文台は、4000メートルを超える高地にあるうえに、天体観測は夜実施するので担当者は昼夜逆転した生活を送っているし、昼間はメンテナンス作業担当の職員が働いている。山麓施設には、研究生、エンジニア、管理職、調査員がいる。こうした状況のため、職員の健康管理には特に気をつける必要がある」と説明する。また、日本人職員やその家族の場合、地元の医師とのやり取りには言葉の問題が付きまとうが、これも解決できる。

 現在は準備を進めており、2013年12月から2014年3月まで実証実験を実施し、2014年4月から本格的にスタートする計画だ。なお、日本人以外の職員に対して香川大との遠隔健康相談サービスを提供するかどうかは、実証実験の結果を見て決めるという。

■変更履歴
本文中に、発言者の意図を正確に反映していない表現がありましたので、本文の第7段落の表現を「・・・こうした状況のため、職員の健康管理には特に気をつける必要がある」と修正しました。[2013/10/22 14:20]