日経パソコンのセミナー「教育ICTイノベーション2013」の基調講演に登壇した佐賀県教育庁・教育情報化推進室の福田孝義室長
日経パソコンのセミナー「教育ICTイノベーション2013」の基調講演に登壇した佐賀県教育庁・教育情報化推進室の福田孝義室長
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佐賀県におけるこれまでの取り組みを示すスライド。2011年から順次、導入を進めてきた
佐賀県におけるこれまでの取り組みを示すスライド。2011年から順次、導入を進めてきた
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生徒が利用する情報端末を決める上で重視した点。「操作性」「価格」「教材」の3つを総合的に判断して、Windows 8のタブレットに決めたという
生徒が利用する情報端末を決める上で重視した点。「操作性」「価格」「教材」の3つを総合的に判断して、Windows 8のタブレットに決めたという
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生徒の端末には、1週間の時間割とともに、その日に行う授業の情報や、そのデジタル教材を表示できる。小テストを実施したり、教員とメッセージをやり取りしたりすることも可能。教員の端末では、校務管理や成績管理のシステムを利用できる
生徒の端末には、1週間の時間割とともに、その日に行う授業の情報や、そのデジタル教材を表示できる。小テストを実施したり、教員とメッセージをやり取りしたりすることも可能。教員の端末では、校務管理や成績管理のシステムを利用できる
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総務省の「フューチャースクール推進事業」および文部科学省の「学びのイノベーション事業」の実証校となった佐賀県立武雄青陵中学校におけるアンケート結果。学習に対する集中力が高まるなど、おおむね良好な結果が示されたという
総務省の「フューチャースクール推進事業」および文部科学省の「学びのイノベーション事業」の実証校となった佐賀県立武雄青陵中学校におけるアンケート結果。学習に対する集中力が高まるなど、おおむね良好な結果が示されたという
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 「教育は失敗ができない。だから、教育に必要な環境を整えた上で、どういった端末を持たせた方が子供たちの教育に望ましいかを考えた」――。佐賀県教育庁・教育情報化推進室の福田孝義室長は2013年10月11日、東京ビッグサイトで開催された「ITpro EXPO 2013」内のセミナーで講演し、佐賀県が進める県立学校全生徒への学習用端末の導入について説明した。

 佐賀県は2014年度から、県立高校の新入生全員に、学習用端末として1人1台のタブレット型パソコンを導入する。2年後には、県立学校の全生徒がタブレットを活用した学習を始めることになり、全国でも先進的な取り組みとして注目されている。既にWindows 8 Proを搭載したタブレットを採用すると決定していて、WindowsかiPadかという学習用端末選定の議論の中でも、引き合いに出されることが多い。

 まず福田氏は、こうした佐賀県の動きは特別なことではなく、国の動きと連動していることを強調した。「平成23年(2011年)4月の『教育の情報化ビジョン』にも、平成32年(2020年)までにデジタル教科書・教材の活用、教室への電子黒板の整備、1人1台の情報端末の整備を実施すべきと明確に書かれている。当時は民主党政権だったが、現在の自民党政権下でも今年6月に『世界最先端IT国家創造宣言』が出された。この中には、1人1台の情報端末による教育の全国的な普及が、2019年までの目標として掲げられている。佐賀県が先を行っているように見えるが、国の動きと連動している」。

2011年度から実証研究を開始

 福田氏は、これまでの具体的な取り組みも紹介した。まず2011年度に、県立中学校(併設型中高一貫教育校)の2校で実証研究を開始。全教室に電子黒板を設置し、全生徒に1人1台の情報端末を配布した。特別支援学校3校でも一部の生徒に情報端末を配布して活用した。続く2012年度は、全4校の県立中学校、全8校の特別支援学校(小・中)の全てで電子黒板の設置と全生徒に対する情報端末の配布を実施。県立高校についても、全36校のうち5校で電子黒板の設置と新入生への情報端末配布を行い、実証研究を開始した。その結果、導入の効果を大いに感じたという。

 当初の計画では、2013年度4月に36校の県立高校全てで情報端末の活用を始める予定だったが、これは2014年度に持ち越した。2012年10月に登場したWindows 8の評価が、2013年度の導入に向けて間に合わなかったためだ。

「操作性」「価格」「教材」が機種選定の条件

 機種選定の上で重視したのは、「操作性」「価格」「教材」の3つだという。操作性については、生徒にとっても先生にとっても使いやすいことが条件。価格も、生徒が購入するときの価格と、教育委員会がサポートするための価格の両面を考慮した。そして、教育に必要な教材がなければ、教育には使えない。「平成23年、24年の段階で教材を確保できたのはiPadとWindowsだけだったので、まずAndroidの端末は除外した。次にiPadとWindowsタブレットをそれぞれ520台ずつ導入して実証研究を行った結果、総合的に判断してWindowsを選択することにした」という。なお、具体的にどのメーカーのどの製品を使うかは、今後入札を通じて決定する。Windowsタブレットの場合は外付けあるいは着脱可能なキーボードを組み合わせて、タブレットとしても、パソコンとしても使える端末を予定している。

 一方で福田氏は、教員研修の必要性も訴えた。「機械を持たせればよいというわけではない。教育を行うのは生身の教員。教員が電子黒板や情報端末を使った授業をできるかどうかが非常に大きなテーマ。そこで、まず教職員の研修をどうすればよいのかを考えてきた」。具体的には、(1)ICTを活用した教育のイメージを教職員に持たせる(2)学校のICT環境のチェック(3)電子黒板や情報端末を使って何を学ばせたいのかという目標を設定(4)実際にICTを活用した実践――という流れで、時間をかけて研修してきたという。さらに今夏に行った2014年度教員採用試験では、課題の一つとして電子黒板を使った模擬授業を取り入れた。