写真1●ケイズデザインラボの代表取締役社長である原 雄司氏
写真1●ケイズデザインラボの代表取締役社長である原 雄司氏
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 「ものづくりでもアジャイル型開発ができる」と語るのは、長年3次元 CG/CADにかかわってきたケイズデザインラボの原雄司社長。3Dプリンターを中心にした機器と3D用のソフトを使うことで、より良いアイデアをより早く製品化できる、という。

 東京ビッグサイトで2013年10月9~11日まで開催された「ITpro EXPO 2013」の最終日、展示会場内のメインシアターにケイズデザインラボの代表取締役社長である原雄司氏が登壇(写真1)。「3Dプリンターがビジネス、ITにもたらすインパクト」と題して、3Dプリンターがたどってきた過去を振り返りながら、エンターテインメントからものづくりまで、同社がかかわってきた3Dプリンターのビジネス事例を紹介した。

 ケイズデザインラボは、3Dツールの販売と3Dデジタルサービス、3Dツールを活用した新事業の企画を行っている。最新の事業としては、同社と3Dプリンターの販売を手がけるイグアス、デジタルものづくりカフェFabCafeが連携した3Dプリンターショールーム「CUBE」を、東京・渋谷の道玄坂に立ち上げた。

写真2●CUBEで実施したワークショップ「自分型チョコレートを贈ろうの会」の様子
写真2●CUBEで実施したワークショップ「自分型チョコレートを贈ろうの会」の様子
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 今回の講演では、まず2013年にCUBEで実施した3Dプリンターを使ったワークショップを紹介した。「バレンタイン限定企画! 『自分型チョコレートを贈ろうの会』」「ホワイトデー限定企画! 3Dワークショップ 『男グミ』」「ジブンドロイド☆ミニ四駆ワークショップ!」というタイトルで、いずれも自分を3Dスキャナーでスキャンしてそのデータを元に型を作成し、3Dプリンターで出力するというものだ(写真2)。バレンタイン企画の自分型チョコは女性限定だが盛況で、海外メディアにも取り上げられて話題となったという。

写真3●ペットボトルに収まる折りたたみ傘のプロトタイプ
写真3●ペットボトルに収まる折りたたみ傘のプロトタイプ
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 このほか、同社はロフトワークスと共催で「Make-a-Thonモノづくりの可能性を考える」というイベントを開き、ワークショップ形式で3Dプリンターを使ったプロトタイピングにも挑戦している。このワークショップでは、ペットボトルの中に傘が収まる機構の折りたたみ傘のプロトタイプ、といったユニークなモノが誕生した(写真3)。

 こういったイベントの実践から「4種の神器の活用で、ハードウエア開発でもアジャイル型開発が可能だ」と原氏は強調する。4種の神器とは3Dプリンター、3Dスキャナー、レーザーカッター、切削加工機で、これらの機器があれば小規模のチームで「要求→開発→試験」のサイクルを数多く繰り返して、よいモノが製作できる、という。

 「実は、3Dプリンターブームは過去にもあった」と原氏。第1次ブームは2000年ごろで、298万円という当時としては画期的な国産3Dプリンター、アウストラーダの「E-DARTSインターネットプリンタ」という製品が登場した。そして、第2次ブームは2007年ごろ到来。「3Dコピー」として話題になり、印刷業界が相次ぎ導入した。しかし、いずれのブームも定着しなかった。そして現在が、3Dプリンター第3次ブームである。

 今回は、前回のブームとの違い、高価だった3Dプリンターも低価格になり、クラウドファンディングといったネットを利用した販売・共有・標準化が進んでいる。低価格化により、ヤマダ電機といった家電量販店が3Dプリンター販売に乗り出したほか、DMM.comによる3Dプリントサービスといった、今まで参入していなかった業種が関わることで、より使いやすい環境が整ってきているという。

 最後に、今回のブームを確実に定着させるためには「アナログとデジタルのバランスが重要」だと原氏は強調する。そのためにも「3Dプリンターという道具を最大限に生かしつつ、手段と目的を違わないことが重要だ」という。そして道具としての3Dプリンターを普及させる鍵は3Dデータの流通であるとして、米国の3Dプリントサービス「Shapeway」や、メーカーが3Dデータを販売する例などを紹介した。