写真1●「どうなる、これからの企業向けクラウド」と題したパネルディスカッションの様子(写真:後藤究、以下同)
写真1●「どうなる、これからの企業向けクラウド」と題したパネルディスカッションの様子(写真:後藤究、以下同)
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 「もはやオンプレミスとクラウドに技術的な差はない」「クラウドは不安という既成概念を取り払うことが重要」---。

 東京ビッグサイトで開催した「ITpro EXPO 2013」で2013年10月11日、「どうなる、これからの企業向けクラウド」と題し、インターネットイニシアティブ(IIJ)、セールスフォース・ドットコム(SFDC)、日本マイクロソフトの3社が参加したパネルディスカッションが開催された(写真1)。モデレーターは日経コンピュータの吉田琢也編集長が務めた。

写真2●セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長
写真2●セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長
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 パネルディスカッションでは、「企業向けのクラウドはどこまで利用できるのか」が議論になった。情報システムの利用企業がクラウドに移行する際に、代表的な懸念点として挙がるのが信頼性とセキュリティだ。この点についてセールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長(写真2)は、「クラウドを運営する事業者にとってセキュリティは当たり前。『クラウドよりも既存のITの方が安全』という規制概念を取り払うための取り組みに力を入れている」と強調する。

 特に「クラウドよりも既存のITの方が安全」という考え方は、「偉い人ほど思っている」と宇陀社長は指摘する。セールスフォース・ドットコムは、金融庁に対する同社のクラウドサービスの説明を5回実施したり、金融庁の外郭団体のセキュリティガイドラインの作成に同社の社員を派遣したりといった取り組みをしていると説明した。「金融庁の外郭団体の海外視察では、当社のデータセンターは高評価を得ており、セキュリティや信頼性には問題はない」と宇陀社長は話す。

写真3●日本マイクロソフト業務執行役員ビジネスプラットフォーム統括本部長の梅田成二氏
写真3●日本マイクロソフト業務執行役員ビジネスプラットフォーム統括本部長の梅田成二氏
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 「セキュリティの観点から見た場合、クラウドでもオンプレミスでも利用する技術は同じ。オンプレミスからクラウドへの移行をためらう人は、自らの手でセキュリティを管理するのか、他人にゆだねるのかといった、人間系の問題で悩んでいる」。こう指摘したのは、日本マイクロソフト業務執行役員ビジネスプラットフォーム統括本部長の梅田成二氏(写真3)だ。

 続けて梅田本部長は、米マイクロソフト自らの事例を紹介した。マイクロソフト内では、CRM(顧客関係管理)や財務会計、人事など約2900のアプリケーションがあった。同社は以前、これらのアプリケーションを全てオンプレミスで利用していたが、80%をクラウド上へ移行した。80%のうち、10%をクラウドで利用できるようにコードを書き直し、20%はクラウド向けに新たに開発、残りの50%は仮想化環境で利用しているという。

 「クラウドに移行しなかったアプリケーションは、取り扱うデータの種類やアプリケーションの複雑さで移行に適さないと判断したもの。リスクや技術的な投資と、移行後のコストや業務支援の効果を考え、移行するかどうかを判断した」と梅田本部長は説明する。

写真4●インターネットイニシアティブ執行役員マーケティング本部長の松本光吉氏
写真4●インターネットイニシアティブ執行役員マーケティング本部長の松本光吉氏
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 IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)を中心にサービスを提供するIIJの執行役員マーケティング本部長 松本光吉氏(写真4)は、同社が実施した顧客への満足度調査の結果を紹介した。品質やサービスレベルについて、「75%の顧客が、オンプレミスからクラウドサービスに移行することで、サービスレベルが上がっていると回答した」(松本本部長)という。

 IIJのIaaSを利用する企業は、電子メール、グループウエア、ファイルサーバーの3種類のシステムを、オンプレミスから移行するケースが多いという。松本本部長は「これらのアプリケーションは実は24時間、サービスの提供が必要だ」と指摘。「自社で24時間、365日間止めないでサーバーを運用するのは難しい。これをクラウドに移行することでコストを削減したうえで、実現できる」と強調した。