「スマホの次のデバイスはどんな形になる?」ーー。最近、そんな動きが目立ってきた。米グーグルの「Google Glass」のようなメガネ型デバイスや、韓国サムスン電子「GALAXY Gear」、ソニー「SmartWatch」といった腕時計型デバイスなど、身に付けるデジタルデバイスが続々と登場している。

 スマホの機能自体が成熟期に近づいているのもその一つの理由だろう。ただ考えてみれば、スマホが搭載するタッチディスプレイだけが、コンピューティングデバイスと人との最終的なインタフェースではない。音声認識やジェスチャー、各種センサーなど、ユーザーインタフェースにはまだまだ可能性が大いに残されている。

 東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2013」最終日、そんなスマホの次の姿が見える刺激的なパネルセッションが繰り広げられた。手書きインタフェースにこだわった新たなコンピューティングデバイス「enchantMOON」(「紙を再発明」――独自OS採用の手書きタブレット「enchantMOON」が登場)を開発、発売したユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEOの清水亮氏(写真1)、「mirama」というヘッドマウントディスプレイと専用OSを開発するブリリアントサービス代表取締役の杉本礼彦氏(写真2)、そして9月にスマホの顔認識を活用して自在に動作するスタンド「スマートイメージングスタンド(IPT-DS10M)」を発表したばかりの、ソニーモバイルコミュニケーションズ UX商品企画部の高塚進氏(写真3)の3人が登壇した「進化するスマートデバイス」と題したパネルセッションだ。

写真1●ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEOの清水亮氏(撮影:後藤究)
写真1●ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEOの清水亮氏(撮影:後藤究)
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写真2●ブリリアントサービス代表取締役の杉本礼彦氏(撮影:後藤究)
写真2●ブリリアントサービス代表取締役の杉本礼彦氏(撮影:後藤究)
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写真3●ソニーモバイルコミュニケーションズ UX商品企画部の高塚進氏(撮影:後藤究)
写真3●ソニーモバイルコミュニケーションズ UX商品企画部の高塚進氏(撮影:後藤究)
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 いずれも劣らず注目の新感覚デバイスを開発した3人ということもあり、会場はぎっしりと人で溢れ、熱気に満ちていた。なお司会はITproの菊池隆裕プロデューサーが務めた。

手書き入力で「大きさを選ばないユーザーインタフェース」が可能に

写真4●“手書きコンピュータ”という新ジャンルの製品である「enchantMOON」(撮影:後藤究)
写真4●“手書きコンピュータ”という新ジャンルの製品である「enchantMOON」(撮影:後藤究)
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 まず取り組みを説明したのが、ユビキタスエンターテインメントの清水氏。話題となっているデバイス「enchantMOON」を片手に、実際に操作しながらその狙いを解説した(写真4)。

 enchantMOONは、一見するとGALAXY Noteのようなペン入力方式のタブレットのように見える。ただ清水氏は、中身は全然異なり「“手書きコンピュータ”という新ジャンルのデバイス」という点を強調する。例えば、手書きで「カメラ」と書きそれを丸で囲むと、書いた場所や大きさに応じて、その画面上にカメラが起動する。さらには手書き文字入力によって各種命令実行が可能で、このような手書き入力だけで簡単なプログラムを組むこともできる。「もともと目指したのでは、小学生でも高齢者でもハイパーテキストコンテンツを作れること」と清水氏は続ける。

 ではなぜenchantMOONで、ここまで手書き入力のユーザーインタフェースにこだわったのか。清水氏は、「今あるOSはユーザーインタフェースが、極めて個人的なもの、パーソナル用途に特化されている。これでは次の段階に進化できないと考えたから」と話す。例えばiPhoneのiOSは、大きくて10インチ程度のデバイスだからこそ成立するユーザーインタフェースだ。画面サイズが壁いっぱい、部屋いっぱいに広がったら何もできなくなってしまう。一方でenchantMOONは、「手書きで書いた大きさによってユーザーインタフェースが変わる。大きさを選ばないのが一つの特徴。黒板全体がユーザーインタフェースになっても、複数人で同時多発的にも動かせる。このような考えで新しい時代のコンピュータを作っている」と清水氏は述べた。