写真●東京工業大学の三島良直学長
写真●東京工業大学の三島良直学長
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 東京工業大学は2013年10月11日、イノベーションを生み出せたり、グローバル化に対応できたりする、ITを含めた理工系人材を輩出することを目指し、同大学・大学院で教育改革を実施すると発表した。今後詳細を詰めていき、最終的には2016年4月をメドに新しい教育体制をスタートさせる。

 東工大の三島良直学長は「大学や大学院で身に付けたものは問わない、という基準で学生を採用する日本企業は少なくない。米国や韓国の企業のように、学生が大学や大学院で何をしてきたのかを重視して採用されるように教育を改革していく」と意気込みを語る(写真)。

 教育改革を通して輩出を目指すのは「自らが身に付けたスキルやノウハウを使って自由に発想し、学術的やビジネス的に付加価値を付けられるデザイン能力とそれを推進する能力を持つ」といったイノベーティブな人材や、「文化の違いなどを踏まえてコミュニケーションを図り、理解する力を持つ」といったグローバル人材だ。

 前者のデザイン能力を持った人材輩出のために、大学と大学院でのカリキュラムや講義内容、教授法を変える。例えば教授法は、教授から学生に知識を一方的に伝える従来のやり方を一新。学生が知識を基に自ら考えて教員などと意見交換をするような教授法に変えていく。

 知識習得については、学生が身に付けたいスキルに応じて、科目のメニューを示して支援する。さらに習得達成度を数値化する仕組みを取り入れ、学生の向学心を高める。

 一方、後者のグローバル人材の輩出策には、海外留学に重点を置く。これまでも欧米を中心とする大学約40校と全学協定で提携し、海外留学制度を整えているが、制度を利用する学生は全体の10%にとどまっている。今後は、資金の支援体制などを整えることで、学生全員に海外留学を経験させることを目指すという。

 東工大は、米ニューヨークタイムズ紙などが2012年に公表した、労働市場で必要な人材の出身大学のランキングでは、世界14位に位置づけられる。理工系大学としては国内トップレベルに位置付けられるものの、英教育雑誌タイムズハイヤーエデュケーションの世界大学ランキングでは125位。「教育改革を通して、研究大学として世界のトップ10に入ることを目指す」と、三島学長は話す。