写真●パネルディスカッションに登壇した3氏。左からサイバーエージェントFX取締役の中村隆之氏、マネックス証券UXデザイン部長の飯田敦氏、楽天証券常務執行役員マーケティング本部長の矢田耕一氏。
写真●パネルディスカッションに登壇した3氏。左からサイバーエージェントFX取締役の中村隆之氏、マネックス証券UXデザイン部長の飯田敦氏、楽天証券常務執行役員マーケティング本部長の矢田耕一氏。
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 個人投資家の間で評価が高まっているネット証券。中でも外国為替証拠金取引(FX)は、24時間取引が可能なネット証券の独擅場だ。その中で勝ち残るために必要なのがユーザー体験であり、ネット証券各社とも力を注いでいる。2013年10月10日、東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2013」で、「ネット証券、FXの「使いやすさ」はこう決まる」と題したパネルディスカッションが行われ、ユーザー体験への取り組みや今後の方向性について語り合った。

 登壇したのはサイバーエージェントFX取締役の中村隆之氏、マネックス証券UXデザイン部長の飯田敦氏、楽天証券常務執行役員マーケティング本部長の矢田耕一氏(写真)。モデレーターはITpro編集長の中村建助が務めた。

 楽天証券の矢田氏は「J.D. Powerの顧客満足度調査を見ると、一番重視されているのは手数料ではあるが、その比率は年々下がっている。手数料は証券会社間の競争が激しく、下落しているので差が小さくなっているからだ。今後重視されるのは画面の操作性などの使い勝手」とユーザービリティが重視されていることに言及。そうした中で、楽天証券はパソコン用アプリケーションとスマートフォン、Webブラウザー用の3種類のクライアントを用意。「チャート見ながら注文できたり、トレンドラインを指で引けるようにするなど、発注の自由度と視認性の良さを重視している。リアルタイムに表示できる情報量も増やしている」という。

 マネックス証券の飯田氏は、現在試行中の新ユーザーインターフェースのユーザー評価を紹介。「すでにネット証券として10年以上営業している。バックエンドは古くから存在するため、軽々しく変更できない。既存のユーザーインターフェースは情報量の密度が高すぎるため、新ユーザーインターフェースを使ってみてもいいとするユーザーは約70%にも上っているが、その一方で使いたい機能にたどりつけなかったというユーザーが50%もいた。変える事自体がストレスになることを示している」と語った。

 サイバーエージェントFXの中村氏は、ユーザーがネット証券を乗り換えることが多いため、「ユーザーが飽きないようにする必要がある。そのためには、ユーザーを理解する必要がある」と指摘、使いやすいアプリのイメージ作りの重要性を語った。「物足りなく感じるアプリは、開発メンバーの多数決で決めたものや他社のコピーで作ったようなもの。誰も責任を取らないのではダメ。そのためには組織から変えないといけない」と明言した。実際、同社のiPad用アプリの開発は8人のチームでスタートしたが、「理解している4人のメンバーに減らして作った」という。

 将来の方向性として、パーソナライズと新しいデバイスへの対応が挙げられた。ユーザーの属性が多様で、「デイトレードをするユーザーもいれば、長期投資のスタンスで数カ月に1度程度取り引きするユーザーもいる。一つのユーザーインターフェースで全てのユーザーが満足することはありえない」(矢田氏)。「株式投資は80%がネットに移ったが、投資信託はまだ対面販売の比率が高い。そこは勧める人を信用している面があるからだろう。将来はそうしたユーザーにもネットに移ってもらえるよう、個々のユーザーに合わせた適切な情報を残すことになる」(飯田氏)。「2014年にはタブレットがパソコンを抜くと言われている。タブレットはパソコンともスマートフォンとも違う使われ方になる。その使われ方に合わせた新しいユーザーインターフェースを提供する必要がある」(中村氏)。

■変更履歴
本文の最後から2番目の段落で「80名のチームでスタートしたが、『理解している4割のメンバーに減らして作った』」としていましたが、正しくは、「8人のチームでスタートしたが、『理解している4人のメンバーに減らして作った』」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2013/10/11 15:20]