2013年10月9~11日に東京ビッグサイトで開催されている「ITpro EXPO 2013」の2日目、会場内のメインシアターで、日経情報ストラテジーの山端宏実記者が、今話題の最も“セクシー”な職業、データサイエンティストについて、20分という短い時間のなかで語りきった(写真1)。
ビッグデータの使い手であるデータサイエンティストは、2013年にIT業界で最も“ホット”な話題でもある。だが一方で、その実像は必ずしも知れわたっていない。それだけに、メインシアターの前を通りがかった人たちのなかには、思わず足を止め、話に聞き入る人の姿も見られた。
まず国内の現状認識として、アクセンチュアやアビームコンサルティングといったITベンダーが数百人規模でデータサイエンティストの確保に動き出していることを紹介。一方で、一般企業では「まだまだ人材育成は始まったばかり」と説明した。
ここで山端記者は日経情報ストラテジーでの取材実績を踏まえて、一般企業におけるデータサイエンティストの育成に向けた「3つの勘所」を提言した(写真2)。
(1)エキスパートを核に始める、(2)“ツーマン”体制を敷く、(3)現場の勘と経験を尊重、である。これら3つをそれぞれ事例を引用して、ひも解いた。
最初に(1)は日本航空の例を引き、分析専属の担当者が中心になって、旅の特集サイトの閲覧を増加させた話をした。1人のエキスパートがデータ分析をけん引する好例だ。それに対して(2)で取り上げた遠州鉄道グループは営業推進課とIT戦略課の担当者が2人1組でチームを組んで分析に当たっている。対照的に思える両社の取り組みにはどちらにも学ぶべき点が多い。
さらに、優秀なデータサイエンティストを既に9人抱えている大阪ガスの話題に触れ、こちらは現場のKKD(勘と経験と度胸)をデータ分析で裏づけ、現場をうまく巻き込んでいることを紹介した。
この日の朝、同じ会場内のアリーナでは、大阪ガスの河本薫氏が初代「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」に選ばれて表彰されたばかりだ(関連記事)。河本氏を含めて、大阪ガスのデータサイエンティストは皆、ガス会社の社員であり、人材を社内から発掘してきて育てている。
こうした人材が社内で活躍するには現場での立ち回りが重要であり、データサイエンティストとして花開くためには「現場のKKDは尊重して、現場を味方に付けるべき」と山端記者は強調した。“セクシー”な職業は、その立ち振る舞いが大切だということだろう。