写真●野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部主任コンサルタントの鈴木良介氏(撮影:新関雅士)
写真●野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部主任コンサルタントの鈴木良介氏(撮影:新関雅士)
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 「データを持っている会社と、そのデータを活用する会社は別にある。この両者を結び付ける“お見合い”の斡旋者が求められている」---。野村総合研究所(NRI)でコンサルタントを務める鈴木良介氏(写真)は2013年10月10日、ビッグデータを活用してビジネスを作り出す手法について、ITpro EXPO 2013で講演した。

 鈴木氏は講演を通して、今後は分析対象の主流はセンサー由来のデータ(機械が自動的に収集するデータ)になっていくことについて説明した。さらに、センサー由来のデータを活用するために不可欠な人材像として、お見合いの斡旋者を例に挙げ、何のデータを何に応用すればビジネスが生まれるかといった仮説を立てて実際に行動することの大切さを説いた。

 冒頭では、ビッグデータの定義と意義について、きめ細かなデータによって顧客個人に最適化した施策を行うことと、リアルタイムに施策を打つことであると説明。顧客の心をつかむ三原則(気配り、目配り、金配り)のうち、気配りと目配りについては、すでにビッグデータ分析の事例が登場しているとした。

センサー由来データの活用が進む

 ビッグデータの種類/内容が変化していると鈴木氏は言う。従来は、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)でやり取りされているメッセージのように人間が発したデータが分析対象となっていたが、今後はセンサー由来のデータがメインになっていくという。

 センサー由来のデータは、各種センサーの普及によって爆発的に増える。この一方で、SNSのデータは、せいぜい現在の1000倍から1万倍程度までしか増えない。理由は、世界の人口も個々人がSNSに向き合う時間もたいして増えないからである。

 鈴木氏は実際に、センサー由来のデータを上手に活用した商品企画の例をいくつか挙げた。真っ先に挙げた事例は、今後販売されることが決まっている「やせるフォーク」(HAPIfork)である。フォークに加速度センサーを内蔵しており、あわてて食べると警告してくれるという代物である。

 「技術的に凄いわけでも、高価というわけでもない。重要なことは加速度センサーとフォークを組み合わせるという気付き」と、鈴木氏は説明。また、「加速度センサーがわずか数百円で買えるようになっていることも大切な要素」とした。位置情報を取得するGPS(全地球測位システム)や、人の動きを把握するモーションキャプチャーも、従来は10万円単位でしか買えなかったものが、今では数百円になっているという。

 このほかにも、多くの事例を挙げた。例えば、ダイキン工業の「soine」(ソイネ)は、体温センサーを内蔵したマットレスである。人間の動き(体温の移動)などを判断して、エアコンを自動制御する。

 味覚センサーも実用化されている。現在では苦味を検知することしかできず、600万円と高価なため、主に製薬業界が使っている。「味覚センサーの価格崩壊が進むと、面白いことになる」と鈴木氏は言う。「60万円になったら、食品製造業が工場ごとの違いを管理する。6万円になったら、弁当販売チェーンが導入する。600円になると、フライパンに実装されてクックパッドと連動する」(鈴木氏)。

 脳波を調べるセンサーを活用した事例もある。ネコ耳のおもちゃのように、カチューシャ型の脳波センサーをクラブで使った例が「Brain Disco」である。客のテンションが上がっているか下がっているかという情報を脳波から得て、テンションが低い場合はDJ(ディスクジョッキー)を交代させるという。これと似た例がラスベガスのカジノであり、顧客の笑顔が減ると施策を講じるという。