アクセンチュア テクノロジーコンサルティング本部 IT戦略 グループ統括 マネジング・ディレクターの西村雅史氏は2013年10月9日、東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2013」で「企業ITの次なる一手、デジタルトランスフォーメーションへ~すべてのビジネスがデジタルに~」と題する講演を行った(写真1)。
コンシューマITと企業ITの融合でビジネスのデジタル化が加速
「デジタルビジネスとは、単純なチャネルのデジタル化やオペレーションのデジタル化ではない」。講演の冒頭で西村氏はこう話し、イノベーションや新商品、プロセス、顧客経験価値に対し、デジタルテクノロジーを活用し、新たな収入とコスト効率の両面を創出することとそうした組織体のことだと定義した。
その上で西村氏は、なぜ今デジタルビジネスが取りざたされているのかについて2つの理由を挙げた。
1つは1995年から2000年の間でプロセッサの性能が1000倍に向上したことやデジタルデータが成長したこと、ソーシャルメディアやスマートフォン(スマホ)が普及したことなどによりすべての情報がデジタル化されたこと。もう1つは、スマホやソーシャルメディアといったコンシューマITと企業ITが融合したことだとした。
ビジネスのデジタル化を阻む3つの呪縛
その一方で、「企業ITは3つの大きな課題に直面している」と西村氏は指摘する。
(1)レガシーシステムをどう取り扱っていくか、(2)IT人材の量と質の両方における不足、(3)経営とIT部門の意識のギャップ---である。「この3つの呪縛からどう逃れ、デジタルの世界へ進むのかが企業ITの大きなテーマになっている」(西村氏)。
次に西村氏は、企業ITのデジタル化の仮説として、企業ITは現実世界を“写像(対象物をあるがままに写して描き出すこと)”することだとした(写真2)。
「今までの企業ITは、業務の効率化や顧客の属性管理などに重きが置かれていた。そうではなく、顧客が何をし好し、どう動いているのか。新たなビジネス機会を企業ITからインサイト(相手になりきって理解する心の動き)として出せるようになる」と西村氏は説明し、現実世界を写像することが企業ITの向かうべき方向だと述べた。
「コンシューマITが企業ITと融合したことがこれを可能にし、今までのようなIT産業の中での単純な進化ではなく、より幅広いインパクトを持って今後のビジネスを左右していくはずだ」(西村氏)。