写真●大連ソフトウェアパーク(DLSP)高級顧問の谷口惠氏
写真●大連ソフトウェアパーク(DLSP)高級顧問の谷口惠氏
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 「対日ビジネスにおいて、大連ほど人材層が厚い都市は他にない」――。2013年10月9日、「ITpro EXPO 2013」の展示会内で開催する「アジアITサミット」に、大連ソフトウェアパーク(DLSP)高級顧問の谷口惠氏が登壇し、力強く語った(写真)。

 谷口氏は、大連の魅力を三つ挙げた。一つめが、成田空港から飛行機で2時間半という立地の良さだ。二つめは優秀なIT人材。遼寧省、吉林省、黒竜江省という中国の東北三省には、スキルレベルが高く、その上日本語コースを設置している理工系大学が集まっており、新卒者を獲得しやすい環境になっているという。三つめが、日本との深い関係だ。23年前に大連のIT産業がスタートして以来、対日オフショアやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の集積地となっており、日本の商習慣になじみのある土地である、と谷口氏は説明する。

 谷口氏が強調するのは、対日ビジネスの強さだ。「大連ソフトウェアパークには約300社が入居しているが、どの企業を訪問しても通訳の必要はない」。業務知識、日本語、対日業務の経験に関する人材層の厚さにおいて、中国の他の都市や世界で大連を上回る地域は他にない、と力を込める。

 大連には、日本語が話せるIT人材が少なくとも3万人はいるとされ、アジアにおける対日オフショア拠点として最大規模を誇る。現地のIT企業各社は、オフショア開発に欠かせないブリッジSEの育成にも注力しており、日中の企業が連携してブリッジSEを育成する取り組みも始まっている。

 一方で、中国における反日感情の高まりと賃金の上昇という懸念にも言及した。反日感情に関しては、2012年に中国で反日運動が盛り上がった際も、大連では通常通りに業務が続けられていた事実を紹介し、「反日感情に関して、中国という一つの枠ではくくらないで欲しい。これが大連のビジネスパーソンの思いだ」(谷口氏)という。

 賃金の上昇については、「確かに人件費は上昇傾向にあるが、新卒者の給与はほとんど変わっていない。雇用のバランスを工夫すれば、ある程度対処できるはずだ」と谷口氏は指摘する。さらに、「オフショア開発を単なるコスト削減策と捉えず、中国市場を見据えて大連で戦略的なパートナーを見つけてほしい」(谷口氏)と、会場に呼びかけ、講演を締めくくった。