写真1●ITpro EXPO 2013で講演する日本マイクロソフト 代表執行役 社長の樋口泰行氏
[画像のクリックで拡大表示]

 2013年10月9日~11日に東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2013」の初日に行われた特別講演に登壇した日本マイクロソフト 代表執行役 社長の樋口泰行氏は、モビリティやクラウドに関する日本マイクロソフトの取り組みに加え、「Surface 2」やWindows Azureデータセンターの国内展開について語った(写真1)。

 樋口氏は日本国内を政治・経済・ITの点から概観し、「自民党への政権交代後、経済は好転しており、オリンピックも一つのマイルストーンとなる。クラウドやビッグデータでも手応えを感じている」と語った。ITについては、モビリティ・ソーシャル・ビッグデータ・クラウドの4点から詳しく説明した。

 モビリティについては、複数のデバイスを所有する人が増えているというデータを挙げ、「日本マイクロソフト社内でもデバイスが増えており、WiFiの増強が必要になってしまった」と社内事情を明かした。ソーシャルではエンタープライズ向け製品「Yammer」を挙げ、「特定のトピックに絞って組織横断的に議論したい場合など、新しいニーズに応えることができる」とメリットを説明した。

 ビッグデータでは、樋口氏自身が小売業に携わっていたときのエピソードに基づき、「理由は分からないが起きている現象がある。これを発見できれば新たな提案につながる」と語った。クラウドについては、2011年の震災後にデータセンター向けのライセンス販売が増加したという実績を紹介。ほかにも「売れるかどうか分からないゲームを立ち上げる際にも、クラウドなら柔軟に対応できる」と活用例を挙げた。

時期は未定だがSurface 2を国内発売へ

 マイクロソフトの新たな戦略について、樋口氏は「デバイス&サービスの会社を目指す」というグローバルでの方針を改めて説明した。独自タブレット「Surface」については、「従来のタブレットでは『買ったけど大したことができない』という不満の声も多い。Surfaceなら、タブレットでありながらデスクトップの資産やキーボード、周辺機器も活用いただける」と述べ、「ノートPCとタブレットを2台持ちしていた人でも、Surfaceなら1台で済む」とメリットを語った。また、法人向けにSurfaceを販売開始したことにも言及した(関連記事)。

写真2●Surface 2の国内発売に言及
[画像のクリックで拡大表示]

 また、樋口氏は9月23日に米マイクロソフトが発表した「Surface 2」にも言及し、「時期は言えないが、日本でも発売する」と約束した(写真2)。

 「デバイス&サービス」のサービスについて樋口氏は、「分かりやすく言えばクラウドのこと。パッケージで売っていたソフトウエアを、月額課金で提供していく」と説明した。また、パブリッククラウドとオンプレミスのシームレスな連携にも言及し、「国内ではオンプレミスでサーバーを立て、海外支店ではクラウドを利用する、といった柔軟な構成が可能」とメリットを挙げた。

 このように、マイクロソフトの「デバイス&サービス」の本質とは、従来の「デスクトップ資産」や「オンプレミス」から続く流れを分断することなく、「タブレット」や「パブリッククラウド」を導入できる点にあると説明した。

 また、日本マイクロソフトではメインフレームなどミッションクリティカルなソリューションにも注力するという。諸外国では銀行の勘定系や公共交通の運行管理にWindowsプラットフォームが使われているという事例を挙げ、「日本でもデータベース、セキュリティ、マネジメント、仮想化、ERP/CRPといった分野でWindowsを推進していく」と語った。

一般発売となるWindows 8.1と、サポート終了となるWindows XP

 Windowsについて、10月18日に一般発売となるWindows 8.1に言及。「企業向け機能を強化し、従来のデスクトップとモダンUIをシームレスに切り替えられる」と説明。スタートボタンの復活や、起動時に直接従来のデスクトップ画面を開く機能を紹介した。Windows 8.1世代の最新プロセッサとしてはインテルの「Bay Trail」を挙げ、高性能・省電力のプロセッサの登場を歓迎した。今後増加するデバイスとしては8インチクラスの小型タブレットを挙げた。

 一方、サポート終了が近づいているWindows XPとOffice 2003について、改めて移行を呼びかけた。Windows XPは12年前のOSで、セキュリティパッチを適用したとしてもリスクは高い状態という。サポート期限は6カ月後に迫っており、「最新のWindows 8または8.1、クラウドのOffice 365への移行を推奨したい」と呼びかけた。

Windows Azureデータセンターを国内でも展開

写真3●日本マイクロソフト チーフ クオリティー オフィサーの越川慎司氏
[画像のクリックで拡大表示]

 日本マイクロソフトの品質に対する取り組みについては、日本マイクロソフト チーフ クオリティー オフィサーの越川慎司氏が説明を行った(写真3)。越川氏は米国本社と行き来しながら品質への取り組みを続けており、「日本でデータセンターの品質について講演するのは初めて」(越川氏)という。

 越川氏によれば、マイクロソフトのデータセンターは世界で70以上あり、3万人のクラウドエンジニアと5000人のオペレーターによって運営されているという。データセンターへの具体的な投資額は非公開だが、スティーブ・バルマー氏は投資額を毎年2倍にすること、それを5年連続で行うことを宣言しているという。

写真4●Windows Azureのデータセンターを国内展開
[画像のクリックで拡大表示]

 日本でのデータセンターとして、Windows Azureの日本リージョンを立ち上げる(写真4)。開始時期はまもなくアナウンスするという。「東日本と西日本にデータセンターを開設し、片方がダウンした場合でも高速に切り替えできる。仮に両方がダウンした場合でも、1分以内に海外のデータセンターに切り替え可能」(同)とする。

写真5●日本から提案を行ったというOffice 365の冗長構成
[画像のクリックで拡大表示]

 さらに、品質への取り組みは日本から世界へ向けて行っているという。例えばOffice 365では、常にアクティブなノードを接続するという冗長構成をとっており(写真5)、国境を越えたデータセンターの切り替えを15秒以内で実現している。これは日本から提案した仕組みであるという。「データセンターでは物理的な障害や人為的なミスが常に起こり得る、という前提に立って冗長化を進める。今後はソフトウエアによる冗長化へと拡大していく」と構想を語った。

 また、日本マイクロソフトの品質についての考え方として越川氏は「日本のお客様が満足する品質なら、世界中のお客様が満足すると考えている。日本の品質をグローバルスタンダードにしたい」と展望を語った。