写真●アマゾン データ サービス ジャパン 代表取締役社長の長崎 忠雄氏(撮影:後藤 究)
写真●アマゾン データ サービス ジャパン 代表取締役社長の長崎 忠雄氏(撮影:後藤 究)
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 2013年10月9日、アマゾン データ サービス ジャパン 代表取締役社長の長崎 忠雄氏が「今、情シス部門が知るべきクラウド導入最前線~企業ITインフラも、アマゾンで。~」と題した講演を、東京ビッグサイトで開催中のITpro EXPO 2013で行った(写真)。同社の取り組みやサービス、クラウド環境構築のポイントについて語った。

AWSの規模はすべての他社を足した数の5倍

 長崎氏はまず、同社の最新状況について触れた。調査会社の米ガートナーの資料を引用しながら、AWSがインフラ部分のクラウドコンピューティング業界のリーダー的位置付けにあると解説。「『AWSは、同社以外のクラウドコンピューティングサービス提供事業者のリソースすべてを足した数の5倍近くの規模ではないか』とガートナーは推測している」と話した。アマゾンがすべての情報を開示しているわけではなく、あくまでもガートナーの推測だが、AWSの大規模さが想像できる。

 また同社は常にAWSの機能拡張を行っている。今年は現在のところ150を超える機能拡張や機能追加を行っており、ユーザーが求める機能をユーザーに代わっていち早く実装できるのだという。

 次に、従来のオンプレミスにはない、AWSやクラウドコンピューティングの特徴を5つ挙げた。それは、(1)「初期投資不要」、(2)「トータルコストがより安価になる」、(3)「ITリソースの余剰・不足からの解放」、(4)「イノベーションを加速」、(5)「本業での付加価値を生まない『付帯業務』の削減」――である。

 (1)は、従来のオンプレミスでは機材等の初期投資がかかることを示している。クラウドであれば、使用量に応じた従量課金となる。

 (2)では、同社が「徹底的に低価格にこだわっている」(長崎氏)ことを紹介。ハイボリューム/ローコストにこだわり、大規模にサービスを展開することで継続的にコストを低減している。また低減したコストをユーザーに還元するようにしているという。「サービス開始からの7年間で、34回値下げをした」(長崎氏)という。

 (3)は、ITリソースのキャパシティプランニングの面倒を、情報システム部門から解放することを意味している。例えば、ユーザー企業が展開するWebサービスにおいて、十分なITリソースがなかったために機会損失を起こしたり、逆にキャパシティに余剰が出てしまったりすることが避けられる。必要なときに必要なだけのリソースを調達できる。

 (4)は、ユーザーがビジネスを立ち上げる際の「実験」や「失敗」のコストを極小化できることを意味している。クラウドが新しいビジネスを素早く立ち上げる手助けをし、失敗時のコストを低減する。

 (5)は、ITリソースのメンテナンスなど、本業ではない業務をユーザー企業から切り離せることを意味している。

 長崎氏は、「企業の業務システムをクラウドに移行するのはまだ早いのでは?」という質問をよく投げかけられるという。しかし、既に日本においても2万以上の企業がAWSを導入していると話す。日本はAWSにおいて最優先クラスの地域で、東京にあるAWSの拠点はこれまでのAWSの拠点のなかで、もっとも初年度成長率が速かったという。

 続いてAWSを導入しているユーザー企業の事例に触れ、コストや導入スピードの優位性について解説した。しかし、事実そうしたユーザー企業は多いが、クラウド導入のメリットはコストやスピードだけではないという。それは、「今までできなかったことが実現できるようになる、ということ」(長崎氏)。具体的な事例として、回転寿司のスシローにおけるビッグデータ解析や、プロバイダーのSo-netでの意思決定システムについて解説した。

 また、企業における基幹システムや業務システムでAWSを利用している事例にも触れ、AWSが複数システムの共用インフラとして使えるとした。こうした流れは今後の主流になると長崎氏は話す。