写真●NTTデータ技術開発本部ソフトウェア工学推進センタの冨安寛センタ長
写真●NTTデータ技術開発本部ソフトウェア工学推進センタの冨安寛センタ長
[画像のクリックで拡大表示]

 2013年10月9日から東京ビッグサイトで開催している「Itpro EXPO 2013」で、NTTデータ技術開発本部ソフトウェア工学推進センタの冨安寛センタ長が「グローバル大競争時代のソフトウェア生産技術革命」と題する講演に登壇した(写真、関連記事:大競争時代のソフト生産技術革命)。

 冒頭で、冨安氏はデジタルカメラと通信端末のスマートフォンが、個人が使うカメラの座を巡り競争を繰り広げていることを引き合いに、「国境を越え業種を越えた競争が日本の企業に課されている」と、日本企業のおかれた現状を整理。「グローバル大競争時代で日本のSIに求められるものは何か」という問題を提起した。

 冨安氏がここで挙げたのは大きく3点。「ビジネスへの迅速な対応が可能な開発速度」「新規ビジネスに対応できる柔軟性のあるカスタムメイドソフト」「日本SIの強みである高品質システムの提供」――である。

 開発速度では、日米の新規IT投資時に想定する投資効果の有効期間を比べ、「米国は1~3年先が中心なのに対し、日本は3~5年先が中心」として、短期間での効果を求められる米国と、長期の運用に耐えられるシステム開発を進める日本を比較した。その上で日本でも短期間のシステム開発は必須と解説している。

 カスタムメイドソフトについては、日米の利用率(日本が9割程度、米国が3割程度)を比較した後で、「パッケージを使っていない日本は、使う努力が必要」としながらも、「米国でも開発コストの7割はカスタムメイドに投資されている」という現状を示し、「米国でもカスタムメイドを使う余地がある」との見通しを示した。

 ソフトウエアの品質については、「品質が高いのが日本の強み」と説明。日本では64%のソフトウエア開発プロジェクトが「成功」と評価され、「失敗」したといわれるのは2%(それ以外はおおむね失敗・成功)なのに対し、米国は成功が32%で失敗が24%と評価されたというデータを引きながら、「海外のSIに勝つには、日本SIの高品質が武器となる」と強調した。

 この状況を受け、冨安氏は「高品質カスタムメイドソフト開発のスピードアップが求められている」と整理した。

 その上で、NTTデータが目指すソフトウエア生産技術革命として「徹底的な開発自動化」と「膨大なデジタル資産の再利用」という2つの方針を示した。

 開発自動化にかかわる取り組みとして、NTTデータはコンピュータ技術を使う自動化領域を「TERASOLUNA Suite」としてパッケージングしている。現行解析や設計、コーディング、テストといった領域にTERASOLUNAの各製品を用意して取り組みを進めた結果「高品質のまま高生産性を実現できた」という。さらに次なる進化として、“テストと同じことをシミュレートする”「TERASOLUNA Suite Simulator(仮称)」を開発中であるともあきらかにした。

 デジタル資産の再利用では、「NTTデータでも再利用は何度も試行したが失敗を繰り返してきた」と振り返りつつ、「大量の開発資産がデジタル化」、「多種・多量データの処理技術が進化」、「アクセス可能な外部情報の増加」といった開発資産を有効活用する下地が整ってきたと説明。現在は資産活用の具体的なユースケースを検討し、その有効性を検討するなど、再利用に向けた取り組みを進めているという。

 最後に、生産技術革新でNTTデータが目指すこととして、「短納期で高品質なカスタムメイドソフトを提供可能に」という方針を掲げた。NTTデータはこれまでに約20%の開発期間短縮を実現してきたが、「2015年には50%、2020年には75%の開発期間短縮を目指す。そのために、常識を外していろいろな取り組みを進めていく」と今後を展望して講演を締めくくった。