写真1●「情報技術マップ」について講演した、野村総合研究所上級研究員情報技術本部先端ITイノベーション部の亀津敦氏
写真1●「情報技術マップ」について講演した、野村総合研究所上級研究員情報技術本部先端ITイノベーション部の亀津敦氏
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写真2●2012年の調査結果では、スマートフォンやタブレット端末に続いて、着手意向指数のトップ5にデータマイニングが初めてランクインした
写真2●2012年の調査結果では、スマートフォンやタブレット端末に続いて、着手意向指数のトップ5にデータマイニングが初めてランクインした
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 2013年10月9~11日に東京ビッグサイトで開催されている「ITpro EXPO 2013」の初日、会場内のメインシアターで、野村総合研究所(NRI)の亀津敦上級研究員が「企業情報システムの技術評価の羅針盤!『情報技術マップ』」と題して講演した(写真1)。亀津氏は講演冒頭でまず会場をぐるっと見回し、「みなさん、このITpro EXPO会場だけでもたくさんの技術が紹介されていますが、いったいどれを選択しますか」と聴衆に問いかけた。

 タイトルにもある情報技術マップとは、毎年生まれては消えていく膨大な数の技術を選択するための指針となる手法のことである。亀津氏も参加する情報サービス産業協会(JISA)が2004年から、約2000人の技術者を対象に調査を実施して、注目すべき技術を年間120件以上評価している。「企業がすべての技術に取り組むのは不可能。優先順位を付けようと始めたのが、情報技術マップだ」と説明した。

 毎年の調査では技術者に対し、「今後も(この技術を)使っていきたい」という「SI実績指数」や「今後は(この技術を)使うべき」という「着手意向指数」を聞いている。こうした利用実績と利用意欲から、それぞれの技術が今、「研究期」「普及期」「安定期」「衰退期」のどのフェーズにあるのかを表にプロットしていく。この位置取りを経年で観察することで、技術の成熟度(ライフサイクル)を確認していく。

 2012年の技術トレンドを見てみると、着手意向指数では、スマートフォンとタブレット端末が第1位と第2位を占めており、関心の高さがうかがえる(写真2)。また第4位にはPaaSが入り、「クラウドを“作る”技術にも注目が集まってきている」(亀津氏)。

 そして講演で亀津氏が強調したのが、初めてトップ5入りを果たしたデータマイニング。データマイニング自体はそれこそ10年以上も前からあるにもかかわらず、「昨年初めて着手意向で第5位にランクインした。ビッグデータに注目が集まるにつれ、分析系の技術に対しても利用意欲が高まっている証拠だろう」(亀津氏)。

 情報技術マップは技術そのものを評価すると同時に、その技術を扱う人材の能力開発にも目を向けている。そのため、「2013年なってデータサイエンティストに関心が集まるのも頷ける」(同)。

 情報技術マップを使うと、技術同士の相関関係も明らかになる。“仲がいい”技術はどれとどれかが分かるだけでなく、その中核となる「ハブ技術」や複数の技術群をつなぐ「ゲートウエイ技術」も見えてくる。人と人との相関図と同じだ。中核技術はそれだけ「仕事のオファー」につながりやすい技術なので、身に付けておけば「つぶしが利く」と考えられる。情報技術マップには、こうした使い方もあるということだ。

 なお、情報技術マップの詳しい内容や、2013年10月下旬から実施する最新調査などについては、JISAのサイトを参照してほしい。