写真●講演する内閣官房内閣情報通信政策監(政府CIO)/情報通信技術(IT)総合戦略室長の遠藤紘一氏(撮影:後藤 究)
写真●講演する内閣官房内閣情報通信政策監(政府CIO)/情報通信技術(IT)総合戦略室長の遠藤紘一氏(撮影:後藤 究)
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 「霞が関が変わり始めた」。2013年10月9日、都内で開幕した「ITpro EXPO 2013」で、内閣官房内閣情報通信政策監(政府CIO)/情報通信技術(IT)総合戦略室長の遠藤紘一氏はこう手応えを口にした(写真)。

 まず遠藤氏は政府CIOを「日本で初めてできた役職」と紹介し、「各省庁にはCIO(最高情報責任者)がいたが、政府としてのCIOはいなかった」と語った。このため、「(各省庁が)個別にやっていたため、1つのことに集中力が出にくい状態になっていた」とした。

 IT戦略についても、「どうやって上手に使っていくかとなった途端に、うまくいかなくなる」と指摘。リコーで副社長を務めるなど民間での経験が長い遠藤氏は「ほとんど同じことが繰り返されている」と話した。

 そこで遠藤氏は「満足できるところにいかなかったのは、どうしてなのか」「どうすればできるのか」を徹底して考えたという。そこで心掛けたのがお客様視点。遠藤氏は「民間企業には必ずお客様がいて、その要望にどう応えていくかが重要になる。そういう思考が非常に弱く、一番直さないといけないところ」と話した。

 政府はIT戦略のなかで、「革新的な新産業・新サービスの創出と全産業の成長を促進する社会の実現」「健康で安心して快適に生活できる、世界一安全で災害に強い社会の実現」「公共サービスがワンストップで誰でもどこでもいつでも受けられる社会の実現」の3つを掲げる。例えば、革新的な新産業・新サービスの創出と全産業の成長を促進する社会の実現では、オープンデータやビッグデータ活用の推進を打ち出している。遠藤氏は今後、オープンデータを国民が使いやすいフォーマットにして提供したり、出せるデータセットを増やしたりしていく考えを明らかにした。

 遠藤氏は講演のなかで、電子行政の問題にも触れた。遠藤氏が一番の問題と指摘したのが、「国と地方がつながっていない」こと。「国民1人ひとりにとってみると、自治体の窓口で手続きをする機会が全然多い。国がいくらやっても、地方と足並みを揃えないといけない」と遠藤氏は強調した。

 最後に遠藤氏はIT戦略を成功に導くために、6つのポイントを挙げた。そのなかで最も力を込めたのが、「民間の経験によるお客様視点」。そのために、省庁で2年ごとに担当者が変わる慣習を見直し、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)などを実行できる人材を育てたいと力説した。